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源氏物語絵巻「鈴虫二」に描かれた高欄その一

大倉集古館特別展「志村ふくみ100歳記念《秋霞》から《野の果て》まで」に行って来ました。展示会図録表紙には「紬織と草木染を芸術の域まで高めた人間国宝の100年の色の物語」とあります。

その日は報道内覧会で担当学芸員さんから展示会コンセプトや作品解説を聞くことができました。
どの作品も素晴らしい!のですが、私が一番心動かされたのは源氏物語をテーマにした作品の「勾欄(こうらん)」というタイトルの着物です。勾欄とは建築用語であることを作品解説から知りました。
全体にグレイッシュなピンクのトーンで、肩から袖と裾にリズミカルな石畳模様が絣で織りだされているもの。もし、一枚だけ選んで着ることができたとしたらの妄想着物ランキングNO.1で、そして、担当学芸員さんによる作品解説がとても興味深かったのです。
「作品タイトル「勾欄」は源氏物語全54帖の中にタイトルとしては無い。勾欄とは、寝殿造の廊下の落下防止の柵状の建築物の一部のこと。志村ふくみさんは源氏物語絵巻の詞書からだけではなく絵図からも着想し、源氏物語絵巻第38帖「鈴虫二」に描かれた勾欄をモチーフにした。」

へ〜!
肩から袖と裾に織りだされたリズミカルな石畳模様が目を惹きますが、作品タイトルの勾欄は身頃全体に織り出されたトントンと水平に連なる緯絣で描かれた部分ということでしょうか。

寝殿造の勾欄という建築用語を染色の題材にしたという作品解説を聞いた瞬間、もう私にとってはたまらない大好きなお話で心動かされました。大好きな日本の伝統建築と大好きな日本の服飾文化である着物という異分野が融合したわけですから〜!

担当学芸員さんから聞いた五島美術館が所蔵するという国宝 源氏物語絵巻の第38帖「鈴虫二」。勾欄が気になり過ぎて、五島美術館で過去に開催された次の図録をチェックしてみました。

「開館五十周年記念特別展 国宝 源氏物語絵巻」図録
平成二十二年(2010)
発行 財団法人 五島美術館

図録の中の解説では、勾欄は同意語の高欄と表記されていました。

何故、志村ふくみさんは作品タイトルを高欄ではなく勾欄にしたのかな?

人間国宝 100歳の志村ふくみさんの着物が織りなす、寝殿造にある高欄の建物がたりです。


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