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七十二侯屏風制作物語 一 「桃始笑(ももはじめてさく)」

母校の学科卒業生有志による作品展「すみの会」に出展するための作品制作中です。

2年に一回の開催で、前回の作品展終了後からすぐに次回のアイデア構想をスタート。七十二候の文字を手書きして着物の裂で表装した作品アイデアがすぐに天から振ってきました〜!

七十二候とは、旧暦の一年を24の期間に分けた二十四節気を、更に初侯•次侯•末侯の3つに分けた季節を表す3または4文字の漢字で、古来中国から伝来して日本の自然にあわせてアレンジされたもの。季節を表すその言葉の美しさに心惹かれます。例えば、新暦でおよそ12月7日から11日は二十四節気「大雪」の初侯の「閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)」。

この七十二候をモチーフにして、カレンダーのように日々暮らしの中で眺めることのできる作品にしようと決めました。現代のマンションのインテリアエレメントとして七十二候を楽しむ提案です。

まずは書の練習。小学校のお習字以来で道具も無かったため、書道用品店で硯、墨、筆、半紙、毛氈を購入するところからのスタートでした。

季節に合わせて書き進めるうちに七十二候を春夏秋冬の四つの季節に分けて画仙紙半切(がせんしはんせつ 横35cm縦136cm)に書くレイアウトに決定。一枚の画仙紙には、三つの侯を横に並べてそれを六段にして十八の侯をレイアウト。再び書道用品店で練習用であること、漢字用であることを伝えておススメの画仙紙を選んでいただきました。十八侯の約60文字が一枚に収まるように練習。文字数が多いため、場外乱闘してしまい一枚に収めるのが大変で苦労しました。

書について素人が指導も受けずにこんな勝手なことをしていいのかな?と不安になったりしましたが、書道展に出展するのではないから自由に表現しようと考えました。松濤美術館で杉本博司さんの「本歌取り 東下り」の書の作品を観て、その考えを後押しされたと思います。練習を始めて約1年、そろそろ清書に進みましょう〜、と勝手に自分で考えて更に再び書道用品店へ。墨をすること、三列並べて漢字をたくさん書くこと、上手く見せたいこと!を伝えて清書用のオススメの画仙紙を選んでいただきました。

練習を始めてから清書までに季節が進んでちょうど七十二候が一巡しました。書く時はその言葉の背景や意味を想像するために参考図書を横に置いて練習しました。

参考図書
「季節の生きもの観察手帖 自然を楽しむ二十四節気•七十二候」
2017年 企画•編集  NPO法人自然観察大学

練習しながらいつも、日本はなんて自然豊かな国なんだろう〜、と七十二候がますます好きになりました。文字も意味も私が1番好きなのは、新暦でおよそ3月10日から14日にあたる二十四節気「啓蟄(けいちつ)」の次候の「桃始笑(ももはじめてさく)」。
参考図書には次のようにあります。

「昔は花が咲くことを、″笑う″と表現した。桃の花は華やかで、季節を象徴するような色である。さまざまな花が開き始めるころでもある。「寺町や垣の隙より桃の花」(夏目漱石)」

書の練習を進めながら、どんな表装にしてどんな作品形態にするかについて構想が固まりました。縁あって出会った龍村の帯を表装にして、二曲一双の屏風仕立てにします。作品完成まで、物語は続きます〜。

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