ほのかな恋
朝起きて、歯を磨きながら庭に眼をやった。
土地が余ったからという理由でつくられたような庭はただでさえ狭いのに、金木犀やブルーベリー、ハナミズキ(今年は咲かなかった)が仲が悪そうに植えられていて、さらに物干しざおやウッドデッキまで置かれている。
そんないつもとかわらない機能的な庭の片隅におかれた鉢植えに大輪の黄色い花が咲いていた。場違いなところで花をつけてしまったかのように、肩身を狭くしているように見受けられるが、さすがに目立っている。
口に歯ブラシをくわえながら庭に降りて近づいてみると、きのう目星をつけていた蕾が開花していた。やっぱり、予想通り。約1年ぶりにズッキーニの花と対面した。
実は、今年の3月末まで農業に関わった仕事もしていまして、昨年はズッキーニを600株と水稲を130aほど栽培していました。
いま現在の生活環境では畑も田んぼもないので、農業と呼べるようなことは残念ながらできません。それでも、作物を育てることが好きなのと、このような暗然とした日常にやさしく色を差してくれそうなので、ささやかながらズッキーニをはじめ、ミニトマト、ナス、ゴーヤ、ピーマン、大葉を鉢植えで育てています。
昨年、育てたズッキーニはカネコ育苗のグリーンボート2号を使いました。定番の品種です。今回は育苗するスペースもないので、近くのホームセンターで売っていたパルチノンという品種の苗を購入しました。鉢植えで育てるにはちょうどいい小柄なズッキーニです。
確かにグリーンボート2号と比べるとひとまわり小さいですが(おそらく施肥料の差もある)、花はウリ科らしい気取らない堂々とした姿をしています。
ただ、ひとつ気になるのは雌べの形が思っていたのと違うこと。実になるところから花を咲かせているので、雌花で間違いないんですが、雄べのような形をしているんですよね。
グリーンボート2号は、ウリ科全般がそうであるようにひとつの株に雄花と雌花のどちらも花をつける雄雌異花で、なおかつ雄花と雌花が分かれて咲く単性花だったのですが、パルチノンはどうなのだろう。品種によって異なることはあるんでしょうか…たぶんありえないと思っていますが…。
今のところ雄花が咲きそうな気配はなくて、おそらく明日にも雌花がもうひとつ顔を出しそうです。咲き始めは雄花が優勢なんですけどね。知っている限りでは。
ズッキーニの花言葉はほのかな恋だそうです。植物の世界では異性としか結ばれないので、ぜひとも花言葉のように恋心を抱ける雄花も咲いてほしいところです。
〈今日の見出し画像は翁草。散歩中の1枚です〉