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短編小説

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#色の恋

冬の人魚

第208回短編小説新人賞 もう一歩

 流氷の合間、冷たい海の中へと沈んでいく。
 口から空気が抜けて、四肢から力が抜けて、命から魂が抜ける。
 最初は、身を切るような冷たさに凍えた。しかし気付けば冷たさすら感じなくなって、石(いし)坂(ざか)柘榴(ざくろ)は海の中から空を見上げていた。太陽の光が水の向こう、遠くに見えた。自分は死ぬのだな、彼女はそう確信した。
 自分がいつか死ぬことについて、考え

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失恋の誉れ

 かつて好きだった男の死体が川から上がった。

「……白髪、増えましたね、紫先生」

 清潔なベッドに横たわる遺体を眺めながら、私は力なく呟いた。
 すでに様々な処置のなされたあとの遺体はとても綺麗だった。
 死んでいるなんて嘘みたいだった。

 さすがに記憶に残る紫先生の顔と比べると老いを感じさせた。
 しかし死んで当然という年齢にも見えない。
 この人はそういえばいくつになるのだろう。
 私は

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