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〖昔書いたお話〗雪女と過ごす夏
こちらは中学生になっていたと思います。
ただひたすら一年中冷たい少女のお話です。
自身の小説に、小話としてこれをふくらましたものを使っていますが、元々はこんな感じでした。
雪女と過ごす夏
雪子ちゃんが隣の家に引っ越してきたのは、私が小学3年生の時でした。
私と雪子ちゃんは同い年で、好きなテレビアニメも似ていたし同じひとりっ子だったから、色々交換して盛り上がり、すぐに親友になりました。
雪子ちゃんがなぜ雪子ちゃんかというと、雪子ちゃんが生まれた日、大変な大雪が降って道をふさいでしまい、雪子ちゃんのお父さんは生まれたばかりの雪子ちゃんには会えなかったそうです。生まれたばかりの赤黒くて子ザルみたいな雪子ちゃんを抱くことはなく、新生児室で眠る雪子ちゃんをガラスごしに初めて見た時は、もうすっかり真っ白な雪子ちゃんだったから、白い、白い、雪だ、雪だ、と〝雪子〟という名前になったのです。
雪子ちゃんと手をつなぐと冷たいんです。腕の裏側なんてプラスティックみたい。
そんな冷たい手をにぎっていると、つい歌いたくなって、『ゆーきやこんこ、あられやこんこ、ふってはふってはずんずんつもる』と口ずさむと、雪子ちゃんも一緒に歌い出すのですが、『こんこ~』と歌うたびに白い煙みたいなものがブワ~ブワワ~と噴き出てきます。
その年の夏のことです。
私と雪子ちゃんは地区のプールに行くことになりました。
うすうすそんな予感はしていたのですが、雪子ちゃんがプールに入ると水が冷たくなるんです。汗がだらだら流れるほどの真夏日なのに、雪子ちゃんが足先を入れただけで水温が変わり、ザブンと全身を水に入れると、プールにいた人たちが全員「ヒー、つめた~」とさわぎになり、私たちは早々に帰宅しました。
お母さんに「どうしたの?具合悪くなった?」と聞かれましたが、雪子ちゃんのせいでプールが凍りついたなんていえないので、「プールすごい混んでた」と言って家でスイカを食べることにしました。
スイカって、どんなに冷やしても、食べる時そんなに音ってしないと思います。でも、雪子ちゃんが食べるとジャリジャリ音がするんです。でも本人はすごく美味しそうに食べるから、きっとシャーベットみたいで美味しいことは美味しいんだろうなと思います。
雪子ちゃんはずっと私の大切な親友ですが、でもひょっとしたら、本物の雪女なのかもしれません。
(終)
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