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高杉隼人
2016年8月7日 01:17
記憶を無くす前の私が住んでいたアパートは、築十年ほどの四階建てアパートだ。古くもなければ新しくもない。茶色い外観のどこにでもある普通のアパートだ。 私たちは管理人の金子さんが住んでいる一階の家を訪ねた。ドアを開けて出てきたのは、丸い眼鏡をかけて少しふっくらとした体型の温厚そうなおばさんだった。家の中からは、テレビドラマの音声が聞こえてくる。「あら、若葉ちゃんじゃないの。今までどこにいたの