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高杉隼人
2017年12月9日 00:44
僕が人気脚本家・綾瀬柊介の息子ということはクラスの中でもちょっとした話題になることがある。だから、僕が親父の事を聞かれることも少なくない。主に女子から。「綾瀬君って、あの綾瀬柊介の息子なんでしょ? お父さんにサインって書いてもらえないかな?」 クラスのミーハーな女子は聞いてくる。「さあ、どうだろう? 親父も忙しいからね」 そう笑って受け流しているけど、内心穏やかではない。コメンテーターと
2017年10月31日 22:53
「圭吾。鈴ちゃんが来たわよ」 玄関から母さんの声が聞こえる。朝の身支度を終えて、僕は部屋を出る。脚本でストーリーの持って行き方に苦労して、深夜まで脚本を書いていた。それから宿題を済ませたので、睡眠時間は三時間ほど。本当に眠い。「おはよう」 玄関では江藤鈴奈(えとうすずな)が待っていた。鈴奈が朝に家に来るのは、日課になっている。僕は母さんが見送るのを背に、待っていた鈴奈と一緒に家を出る。 鈴
2017年10月20日 23:24
僕はまだ高校一年生。帰宅してからが僕の仕事だ。部屋に入りパソコンを起動させ、原稿を書き始める。今書いているのは、「幸福な日常」という水曜日の夜十時から放送される青春ドラマの脚本だ。内容は主人公の男子大学生が心を閉ざした同級生の女性と心を通わせるといったものだ。初回の視聴率と評判がともに良く、「やっぱり綾瀬柊介の脚本は素晴らしい」と言われているらしい。書いているのは僕だけど。 親父は夜の八時には
2017年10月20日 23:19
綾瀬柊介(あやせしゅうすけ)。それが僕の親父の名前だ。親父の職業は脚本家。十年前に脚本を書いた恋愛ドラマ「咲いて散るが如く」が大ヒットして以来、常に第一線を走り続けるトップランナーだ。緻密に作り込まれたストーリー、登場人物の揺れ動く心理描写など、脚本を書くドラマはいずれもヒットを飛ばし、社会現象になる作品さえある。 近年は情報番組のコメンテーターとしてテレビに出ることも多くなった。もうすぐ年齢