私が消え去った町 by LOUISE GLÜCK
原文は以下です。
https://www.poetryfoundation.org/poetrymagazine/poems/56626/aboriginal-landscape
お前はお父さんの上に乗っているのよ。
母が言った。
私は草原のベッドの、真ん中にいた。
きちんと刈り込まれた草。父の墓と同じに。
墓標はそうは言っていなかったけれど。
お前はお父さんの上に乗っているのよ。
もう一度、母は言った。大きな声で。
私はちょっと変だと感じる。
母は亡くなっているのだと、医者が言ったのだから。
私はわずかに横に逸れる。
父は死に、母が葬儀を始める。
静かだった。
風が木々を抜け、
微かに聞こえたのだ
数列からなるすすり泣く声が。
その後ろで、犬も鳴いていた。
しばらくして、、声が落ち着いた。
ここに連れてこられた記憶が無いことに気付いた。
葬式が行われている気がする、この場所へ。
私の心の中でだけなのかもしれない。
たぶんそこは公園だったし、そうでなかったとしても、
かぐわしい木陰か、花園だった。
分かった、あれはバラの香りだ。
幸せが生の気を満たし、甘い生活の訪れを告げる。
ふと思ったのだ。私は一人きりなのだと。
だれもかれも逝ってしまった。
いとこも、妹も。ケイトリン、アビゲイル。
日が陰ってきた。
車はどこ?
車がない。
寂しさが膨れる。耐えられない。
だけど、どこか遠くに、小さな汽車を見つけたのだ。
群葉の陰に停まっていた。
車掌が指さし確認をして、煙草を吸っている。
置いてかないで!
ついに彼を引き留めると、
マダム、と車掌はレールを指差したのだった。
お分かりの通りここが終点です。これ以上先へは進めません。
言葉は厳しかったが、目が優しかった。
だから彼に言ってみようと思ったのだ。
彼らは帰ってきます。
すごく強いから。いつもそうだったから。
車掌ははっきりと言った。
我々の仕事は難しいのです。
いつだって、悲しく、がっかりするものなのです。
私もかつてあなたと同じでした。愛情という混乱に怯えていた。
私は、旧友に語るように言ったのだった。
なんで? また町を見に帰りたくないって言うの?
ここが、私の故郷なんだよ。
私が消え去った、町。
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起業家研究所・学習塾omiiko 代表 松井勇人(まつい はやと)
下のリンクの新刊出させていただきました。
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