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追悼:野中郁次郎先生
組織論は?
野中郁次郎先生が亡くなった。
先生の本を初めて目にしたのは97年、2回生のときだ。当時僕は大学のプログラムを使いカナダのブリティッシュ・コロンビア大学へ留学する予定だったけれど、担当者の逆鱗に触れ留学できなくなった。
夏休み明けから田井修司教授のゼミに転属。親友の小西は4月から田井ゼミにいたけれど、田井先生と大喧嘩してゼミに来なくなってしまった。
立命館大学政策科学部のヤバいところは、僕よりヤバい奴がウヨウヨいるところだ。
「なにを学びたい?」
「組織論と会計論と起業論のグループがある」
「組織論でお願いします」
「分かった考えておく」
次の週。
「松井君は起業論だったな」
「え?」
「組織論ですけど」
「起業論だよな」
「組織論は・・・?」
「今日だけとにかく起業論を学べよ」
「え、」
「は、はい」
それからずっと起業論である。教授は生徒よりヤバい。
ちなみに50歳になった今でも僕は起業論だ。
知識創造企業
組織論のグループで輪読していた本が野中郁次郎先生の『知識創造企業』だった。
タイトルが格好いい。
「先生、『知識創造企業』ってカッコいいですね」
「タイトルだけじゃないぞ」
「去年出たばかりなのに、あの本読んでなきゃ経営学者として失格って言われてる」
「日本人経営学者から出た初めての世界的理論なんだ」
「僕も世界的な研究者になりたいんです」
・・・これはヤバいと思わないで欲しい。
「なるほど」
「組織論グループに入れて下さい」
意を決し、そう伝えた。
「来週な」
先生の「今日だけは」「来週な」は延々と続き、痺れを切らした僕は自分で勝手に本を買って読むことにした。
「先生『知識創造企業』読みました」
空気は一切読まないが本は読む。
「お、」
「おう」
「どうだった?」
このときドヤ顔でもっともらしいことを伝えたはずだ。だから嫌われるのだが、実際は難しすぎてまったく分かっていない。
覚えているのは、
「僕が好きな河合隼雄の方が断然上だと思います」
と言ったことである。
立命館の大学院に進んだが放校になる。39歳で静岡県立大学大学院に再入学。日本を代表する経営学者の奥村昭博先生に同じように言った。
「野中は私の親友で〜、、、」
「ゲェ」
「マジか」
「ヤベェ!!」
他人の悪口は言うべきでない。
大学院は色々なことを教えてくれる。
恩人
97年、田井先生は危険なオーラを醸し出す僕に『知識創造企業』は危なすぎると思ったのだろう。
僕は僕で起業論を学ばなかったら野垂れ死んでいた。
野中先生は恩人だったのである。あの本がなければ組織論グループへ進み、今頃行き倒れていたはずだ。
本棚の『知識創造企業』を探す。恐るべきことだが見当たらない。この文献が無いわけが無いのだが。
「本も成仏されたか・・・」
「俺の失礼さと共に天へ・・・」
野中先生によれば、形式知を暗黙知へ内面化するためには大事な何かを捨てねばならない。
罪は晴れた。
明日から自由だ。
そう、知識は新たな未来を創造する。
野中先生、安らかにお眠りください。
先生は本当に私の憧れでしたm(_ _)m
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![Hayato Matsui『逆転人生』共著者](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/139984636/profile_641a42246c37a701dfc0efcc4abb6d41.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)