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「あらゆる痛みの本当の原因は骨盤の歪みだ」なんて100億%否定できる

みなさんこんにちは。
北海道若手治療家コミュニティ
花田隼人(@hokkaido_wakateです。

 
 

断言します。


「あらゆる痛みの本当の原因は 
骨盤の歪みです!」


なんてことは


100億%、ありえません。


では一体なぜか?

という話を今回は書きたい思います。


無料にしておきますので、
ぜひ最後までお読みください。
 
  



 


 

1.骨盤矯正の歴史を知る



そもそも骨盤矯正は
人類史のいつから登場したのでしょうか?

日本に限れば、
史実で判明しているなかで
その登場は明治時代になります。

明治政府は
西洋諸国に後れを取っていた
国内医科学の近代化のために、
非科学的な慣習を一掃する政策をとり、

山中で修行し悟りを開く
「修験道(しゅげんどう)」や、
呪術、祈祷、占術など
多くの文化的な術式を禁止しました。

しかし表向きには禁止されていても、
名前を変えることで同様の業態は存続し、

開国によって諸外国から流入した
「カイロ」「催眠術」と
国内旧来の術式が混ざることで、
「霊術」として普及します。

この頃に流入した「カイロ」は、
まだ現代のような学問として
体系化されていないものでした。

明治以降日本で広がった「霊術」とは、

  • 「狭義の霊術」…祈祷・交霊

  • 「療術」…手当て・カイロ

  • 「精神療法」…暗示・催眠

  • 「心霊療法」…超能力

  • 「身体的指導」…断食・体操

などのような
非常に多様なアプローチ方法をもち、
これらを顧客に提供する「霊術家」が
日本全国に増えていくこととなります。

1897年になるとアメリカでは
カイロプラクティックの創始者が
ついに大学を創立し、

徒手的な施術業の
体系的な学習環境を整えます。

これは日本が明治30年の出来事です。


そして1916年、
日本が大正5年のとき、

河口三郎氏がアメリカで
カイロプラクティックDCとなり、
その技術を日本に持ち帰ってきます。

カイロプラクティックの
世界観の追い風も受けながら
霊術家はどんどん増えていき、

昭和5年には日本全国に3万人の
霊術家を生むことになります。

昭和が始まって間もないこのころ、
カイロプラクティックや
オステオパシーを含んだ
いわゆる現代に通じる”整体”が
日本ではすでに一般化していました。


このような背景を踏まえると、

「偏位、特に骨盤部を含んだ
 骨格を矯正するような手技」

施術として一般化したのは、

日本国内においては
明治~大正時代の霊術の変容過程
といえるのではないかと考えられます。


では、
それ以前の時代はどうでしょうか?

江戸時代、奈良時代、飛鳥時代の
「腰痛」や「肩こり」は、

骨盤矯正が体系化されていない
時代だったからといって、
全く治ることはなかったのでしょうか?

そんなはずないですよね?

あらゆる痛みの原因が
「骨盤の歪み」なのであれば、

それを整える施術が
体系化されていない時代の痛みは、
「不治の病」であったはずです。

しかし
現代の腰痛を見れば分かる通り
「骨盤の歪み」を整えなくても
腰痛が消えていく例は
実際問題少なくない
ですし、

だからこそ
「痛みが無くなると来なくなる」という
クライエントに我々は悩む
わけですし、

そういう人に対して
根本治療を訴えかけて
骨盤矯正をしようとする
わけです。

骨盤矯正に必要性を感じない層が
十分満足し元気になって離れていき、
それを我々が引き止めようとしている。

その事実そのものが、

骨盤の歪みが「あらゆる痛み」の
本当の原因ではないということを
よくよく表しているといえます。






2.結核の歴史にみる症状と原因



ここで、
視点を別なものに変えてみます。

「結核」という感染症があります。

結核とは、
「結核菌」という細菌による
慢性呼吸器感染症です。

毎年3月24日は世界結核デー

患者がくしゃみや咳をして
体外に排出された結核菌は
微細な大きさのため、
空気中を漂っています。

この結核菌を吸い込んで、
小さな病変が呼吸器に生じ、
肺の入り口のリンパ節が
腫れるなどすると感染が成立します。

感染が成立しても、
多くの場合は免疫力で抑えられますが、
免疫が低下している場合には
全身的な「結核症」に進む疾患です。

この結核は太古より存在し、
紀元前7,000年ごろの人骨からは
結核が感染したと想定される
痕跡が見つかっています。

結核は脊椎カリエスとよばれる
骨病変を起こすこともあるからです。

1830年にはロンドンで
この結核が大流行しており、
5人に1人は結核で命を落とす
致命的な感染症
でした。

そこから約50年が経過してようやく
1852年に「結核菌」が発見され、
この謎の呼吸器疾患パンデミックの
原因が明らかにされました。

その約40年後、
1921年(大正10年)になって
結核菌に対するワクチンである
「BCGワクチン」が確立
されます。

これが結核菌を相手に
人類が対抗できる時代の始まりです。

1943年には結核菌に有効な
抗生物質が発見されて
治療薬も研究が進みました。

Photo by (c)Tomo.Yun
ゆんフリー素材写真集

日本はこの間
太平洋戦争真っ只中であったため
結核医療を享受するタイミングが遅れます。

当時の結核は死亡率が非常に高く、
「結核」という言葉を口にすることも
憚られる社会情勢が生まれました。

ドイツ語に由来する隠語として
結核を「テーベー」と呼ぶ
風習も生まれたほどで、

結核に感染していると軍部に疑わせれば、
兵役を逃れることさえできました。

そんなこんなで
日本では1940年代まで
結核は「不治の病」と恐れられ、
世界から遅れをとることになります。

つまり何が言いたいかというと、

「結核」は
太古から存在していたにも関わらず、
有効な治療法が確立される19世紀まで
「原因不明」の「不治の病」で
みな感染すると治ることなく命を落とした
ということです。

現代でも結核には
結核菌に対するワクチン接種と、
結核菌に有効な抗生物質が使われます。

骨盤矯正のように治癒過程で
「不要だった例」は原則ありません。



 



3.因果関係が確立される条件



原因と結果を語るということは、
「因果関係」であると
主張するということです。

因果関係は、
それを成立させるための
5要件が示されており、

これらを満たすことで
「原因と結果の関係にある」と
広く公に認められやすくなります。

因果関係の5要件とは次のとおりです。

  1. 普遍性

  2. 密接性

  3. 時間性

  4. 特異性

  5. 整合性

以上5要件です。

普遍性とは、
時期、地域、対象を変えても
同じ結果が得られるかどうか。

密接性とは、
原因と結果に強い関係性があるかどうか。

時間性とは、
原因が先にあって
結果が後に発生しているかどうか。

特異性とは、
その原因が他の原因よりも
強く結果に影響するかどうか。

整合性とは、
既知の理論と矛盾がないかどうか。

このような要件を
どれだけ満たすかで
因果関係の強固さが変わります。

例えば、
足首を捻ったことで
前距腓靱帯を断裂したとします。

これはどの人物、
どの時代、
どの地域であったとしても、
基本的に同じ外力であれば
同様の負傷が起こりえますし、(普遍性)

足首を「捻らない」よりも
「捻ってしまった」方が
怪我を起こしやすいのは当然で、

「足首を捻ること」と
靱帯が切れることは
強い関係性があるといえます。(密接性)

足首を捻るという「原因」が先行し
靭帯断裂という「結果」が後に生じます。
(時間性)

また「足首を捻る」以外で
前距腓靱帯を断裂することは
基本的には考えにくいものですし、(特異性)

これらと相反するような
既知の医学は恐らく無いと
言っていいでしょう。(整合性)

こうして
足首を捻ってしまうことが原因で
前距腓靱帯が断裂する
という
「因果関係」が成立します。






4.結核と骨盤のゆがみ



結核もこれと同様です。

「結核菌に感染すると結核を発症する」
という菌と疾病の関係性は、

地域や人種などの条件を変えても
基本的には変わらず、
“時代”を超えて共通します。(普遍性)

結核の発症は
「結核菌の感染」と
強い関係性があり、(密接性)

感染が先に生じることで
発症が後に起こります。(時間性)

結核菌への感染以外によって
結核を発症することは
原則ありませんし、(特異性)

これらの事実を否定できる
他の事実は無いといって
誤りはないでしょう。(整合性)



しかし「骨盤の歪み」はどうでしょうか。

仮に密接な関係性が
あったとしても、

骨盤の歪みが
痛みの発症よりも
前に起こったものなのか?

痛みが出たことで
代償動作のような影響を受けて
歪みを引き起こしたのか?

それを判断することは
初めて会う新患であれば
到底知ることは難しい問題です。

痛みの発症に先行して
歪みが起きたとしても、
その歪みが10年も20年も前から
体に存在するものであれば、

今回発症した痛みと
“時間的前後関係性”があるとは
解釈にくくなるうえに、
過去の体を知らない我々に
その比較検討は基本線不可能です。

整骨院をよく利用する4%以外の人は
矯正を受けなくても症状が回復する

そして「普遍性」

初めに紹介した通り
現代のような骨盤矯正は
およそ明治時代以降に広まったものです。

“あらゆる痛み”が
骨盤の歪みを原因とするのであれば、

骨盤矯正が“普及”する以前の痛みは
原則改善しないことになります。


現代の現実に照らし合わせても、
骨盤矯正を受けない別の手段で
症状が改善することは多々あります。

その最たる手段はおそらく
「放置」となるでしょう。

整骨院の利用割合を調べた
一般の方向けのアンケート調査では
「よく整骨院を利用する」と答える人が
全体の約4%といわれます。

そんな受療状況を勘定に入れると、
むしろ施術を受けずに
自然に軽快して治癒する例の方が
数としては潜在的に多い
といえます。

これは骨盤矯正「以外の手法」でも
痛みが治ることを示しており、

これによって
「骨盤の歪みこそが痛みの原因」であり
「それ以外は誤りである」という
「特異性」も疑わざるをえなくなります。






5.「あらゆる痛みの本当の原因」か?



こうした事実を踏まえると、
「あらゆる痛みの本当の原因は骨盤の歪み」
「骨盤矯正をすればあらゆる痛みが治る」
という主張は、

事実と整合性がとれない
考えるのが妥当ではないでしょうか?

骨盤の歪み、
骨盤矯正はこのように、

・因果関係の要件視点
・歴史的視点

に立って比較すると

その因果構造が
非常に不安定であることが分かります。


それでも骨盤矯正によって
治癒方向へ向かう症例は存在しますし、

骨盤が歪むような生活習慣によって
痛みが出ていると考えるのが
妥当な経緯で発症している人もいます。


骨盤の歪みと痛みは
「因果関係」にあるというよりは
「相関関係」にあるとするのが
適切なラインといえるでしょう。

本記事のタイトルにある

「あらゆる痛みの
 本当の原因は骨盤の歪み」

というコピーについて
100億%否定できるのは、
「あらゆる」「本当の原因」の部分です。

骨盤矯正で良くなる例もありますし、
必要のない例もあります。

骨盤の歪みが
“関わっている”こともありますし、
全く関係ないこともあります。

人によりますし、
時と場合によりますし、

これを「あらゆる」と括るのは
どうしたって過剰な大きさであって、
「本当の原因」である例はごく限定的です。

直すのであれば「原因」よりも
「要因」がより適切といえます。


「あらゆる痛み」の「本当の原因」が
骨盤の歪みだというのなら、
骨盤矯正が普及していなかった
時代の痛みはどう説明するつもりですか?



そう、思いませんか?

花田はそう思います。

だから、

「あらゆる痛みの
 本当の原因は骨盤の歪みだ」

という主張は
100億%否定できる
と、
この記事で書き記すことにしました。
 

以上が全国の若手治療家に
いま一度考えてほしいと
花田が思っていることです。

いかがでしたでしょうか?

何かの参考になれば
とても嬉しいです。

ぜひ日々の診療や学びに
お役立てください。

商売目線で言っていることと、
プロ目線での正しさの追求は、
区別できるようにしておきましょう。

最後までお付き合い
ありがとうございました。

  


花田は新患対応で何を見ているか?

▲記事に書かせていただきました。
ぜひ目を通してみてください★


 
 

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