「言い換えるオウム返し」で本当に共感的態度を取れるのか?
みなさんこんにちは。
北海道若手治療家コミュニティの
花田隼人(@hokkaido_wakate)です。
今回は
表題の内容について述べていきます。
傾聴とオウム返し
「傾聴」という視点に立ったとき
相手の話を受け止めていて
共感的態度をとって
ラポールを形成するツールとして
「言い換えるオウム返し」は
まとめサイトやら何やらでも
よく見かけるものですよね。
例えば、
「昨日家族と稚内まで
旅行に行ってくたびれたのよ。」
という話をクライエントからされたとき
「そんな北の方まで、お疲れでしたね」
といったように
「稚内」→「北の方」
「くたびれた」→「お疲れ」
といったように
相手の話した内容を
言い換えて返すことで
“あなたの気持ちは
私なりにも解釈して伝わりましたよ”
というポーズをとることができます。
「そうですか、
家族と稚内まで行って
くたびれたんですね」
と同じワードとセンテンスを返すのは
どう考えても不自然なので、
的外れにならない程度に
別の言葉に置き換えつつ
同じ内容で返すことは、
コミュニケーション上の
テクニックの一つです。
ネットで調べたら
うじゃうじゃと出てきますし、
「言い換えてオウム返しするのが良いんだ!」
と実践している人も多いはずです。
不適切な場面はないか?
しかしこれも
全てのシーンで使うのが適切か?
と考えると不適切なシーンもあります。
例えば、問診時。
「肩が張る感じがするんです」
と訴えるクライエントに
「そうですか、突っ張る感じですね」
と返すのはどうでしょう?
「屈むのが怖い感じがある」
と訴えるクライエントに
「なるほど、恐怖心があるんですね」
と返すのはどうでしょう?
「腰が痛いのよ」
と殿部を指差しながら
訴えるクライエントに
「ああ、股関節ですね」
と返すのはどうでしょう?
そろそろこの不自然さに
気がついてくれましたでしょうか。
「怖い」を「恐怖心」と読み替えるべきか
上に述べたような応答は
“数ある表現の中から
クライエント自身が選んだ言い回し”
を尊重した方がむしろ自然であり
なおかつ共感的態度も
伝わりやすい一例です。
クライエント自身が
自分の語彙力のなかから
精一杯チョイスした言葉を
一度受け止めることも大切です。
「屈むのが怖い感じがある」
と訴えるクライエントに対しては
「なるほど、怖い感じですね」
と一度コピーして返し、
言い換えることで
さらに共感を示したい場合や、
クライエントが選んだ表現から
状態をよくイメージできない場合は、
「痛くなりそう?
おっかない感じ?
恐怖心って感じですか?」
などと別の言葉を例示して、
クライエントの感覚と
術者側のイメージの差異を
減らしていきます。
「そうそう、なんだか痛くなりそうで...」
とクライエントも
術者が示した例のなかから
返してくれるので
より建設的な問診応答になるはずです。
「怖い」という個人が体感する
【感情】を吐露したものを、
「恐怖心」という
【名詞】に置き換えられ、
あくまで他者側視点で
辞書的に理解されているのでは、
「怖い」という気持ちに対して
共感的態度をとれているかはかなり微妙で、
どこか自分の訴えが
術者に伝わらずに
落っことされた気になる人もいるでしょう。
そこは腰じゃない
「腰が痛いのよ」
と殿部を指差しながら
訴えるクライエントに
「股関節が痛いんですね」と返すのは
はっきり言って野暮なもので
“腰”と表現する体のエリアは
個人および年代層によって多少違いがあり、
花田の経験上、
高齢者ほど殿部を「腰」と表現します。
これに対して
「そこは腰じゃなくてお尻」とか
「股関節(の後ろ側)ですね」とか
初手から正す必要性はほとんどなく
まずは一旦
「腰ですね」と返して
患部である殿部に
触れてあげるべきかと思います。
その上で、
本人が感じている痛みは
“お尻”という表現だと
不適切なのかをチェックしつつ
医学的な状態理解を促す目的で、
「腰、というより『お尻』でしょうか?」
と話を向けてみて
「そうだな。そう言われるとお尻だな」
と返されるのか、
「いや、腰だ。お尻ではない。」
と返されるのかで、
その後もクライエントが理解しやすいように
「腰」という言葉で会話してあげるのか、
解剖図か何かを見せながら
どこがどうなって痛みが出ているといった
理解や説明に支障があれば「お尻」に認識を
正すようなレクチャーをしてあげるのか、
そんな対応の違いが
生まれてくるはずです。
言い換えるオウム返しの是非
どちらが正しいとかではありませんが、
これを初手から
「言い換えるオウム返し」=絶対正義
と鵜呑みにして乱用していると
クライエントが伝えたかったニュアンスと
異なる返しをするだけになってしまい
結果として
なんら共感的態度によるベネフィットを
受けられないことになりかねません。
言い換えるオウム返しは
症状の訴えには不適切であるケースが
意外と多いというお話でした。
伝わりましたでしょうか?
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