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俺ら史上最大ドッキリ
これまで俺たちは数多くのドッキリを実行してきた。(もちろんターゲットにされることもある)
『對馬、ブチ切れドッキリ』
『寺田、秋保おばけ事件』
など挙げたらキリがない(笑)
中には忘れてしまったものもあるだろう。
だが、今回書くドッキリはなぜかみんな覚えていて、何度振り返っても笑ってしまう。
ただ、このドッキリは少し内容が複雑なので、言語化するのが難しいのですが頑張って書いていきます!
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俺たちにとって、最後の大会となる総体地区予選も近づいてきたある日。
その日は土曜日で、いつものようにトレーニングを行っていた。この後ドッキリが待ち構えてるとは思わなかった。
俺と紘太くん以外は・・・
このドッキリの登場人物は以下の通り。
■ドッキリ仕掛け人
あっちゃん、聡汰、對馬、聖多
■ターゲット
紘太くん
ここで、もしかしたらお気付きの方がいるかもしれないが、俺はどちらにも入っていない。
このドッキリは、部室に残っていたメンバーにより急遽実行されたものなので俺はドッキリの内容を聞く時間がなかったのだ。そのため俺は仕掛け人側になるはずが、内容を聞かされていないため紘太くんと同様にドッキリをかけられることとなる。
そのため、登場人物を正確に書くと以下のような感じだろうか。
■ドッキリ仕掛け人
あっちゃん、聡汰、對馬、聖多
■ターゲット
紘太くん、(隼人)
この(隼人)が思わぬ展開を生むこととなる。
ドッキリの内容は至ってシンプルというか、くだらないものだった。笑
部室にて、對馬が紘太くんを押すと、後ろにいたあっちゃんにぶつかり、あっちゃんがキレるといったものだった。
急遽実行したこともあり、おそらく仕掛け人のメンバーもそこまで盛り上がりはしないだろうと思いながら決行したと推測する。
そしてドッキリがスタート!!
※俺は紘太くんと同様にドッキリが行われるとは思っていない。
計画通り、對馬が紘太くんと取っ組み合いのような格好をとりふざけ始めた。
紘太くんのことを軽く押すと、あっちゃんにぶつかった。これは偶然だったのかは分からないが、着替えていたあっちゃんの私服を足で踏んでしまった。
そこであっちゃんが台本通りキレる...はずがアドリブで紘太くんの頬を思いっきりビンタした(笑)
「パチッ」
俺はこのとき初めてビンタを生で目撃した。
對馬や聡汰は笑っていたが、ドッキリだと知らない俺は一人で焦っていた。
紘太くんを見ると今にも泣きそうだ。
あっちゃんは、部室のドアをグーでパンチし、
「ふざけんな!」
と捨て台詞を残してこの場を後にした。
對馬や聡汰は、このときあっちゃんがドッキリではなく本当に怒ってしまったのかと不安に思ったそうだ。それくらい迫真の演技だった。
俺たちがいる部室は静まり返っている。
ここで對馬が紘太くんに、謝りに行った方がいいのではないかと提案した。これも台本通りの設定だったのだろうが、そんなことを知らない俺は對馬に食ってかかった。
「紘太くんだけが謝るのはおかしいだろ!對馬と遊んでてこうなったんだから、對馬も悪いだろ!」
俺は紘太くんを守るためにこう言ったのだが、俺がこんなことを言うもんだから、紘太くんはまさかこれがドッキリだなんて思うことはなかったはずだ。
このときの紘太くんは本当にかわいそうだった。ビンタはされるわ、俺は對馬に怒り空気がさらに悪くなるわ(笑)
俺のよくわからない正義感が逆に紘太くんを苦しめた。
俺がこのように振る舞うことで、このドッキリはよりリアル感を増しただろう。
對馬や聡汰からすれば、してやったりだったのではないだろうか。
とりあえず、あっちゃんに謝りに行こうということになり、俺たちは部室を出た。
この道中で、聖多が俺にこっそり声をかけてくれた。
(紘太くんには聞こえないように)
「隼人、これドッキリだよ。」
しかし俺は、聖多のことを信じないどころか、こう返した。
「んなわけねーだろ!あっちゃん本気でブチ切れてただろ!」
紘太くんをかばってなのか、俺も変に熱くなっていた。
部室の鍵を返し、駐輪場に着くとあっちゃんがウロウロしていた。
このときあっちゃんは、このドッキリの終わらせ方を聞いていなかったため、俺たちのことを待っていたそうだ(笑)
紘太くんは、謝罪をしようとあっちゃんに恐る恐る近づいていった。
紘太くんとあっちゃんを2人にし、俺たちは自転車に身を潜めた。
(まだ俺はこれがドッキリなのか半信半疑)
紘太くんが先程の件を
「す、すいませんでした...」
恐る恐る謝罪すると、あっちゃんはまた真顔でアドリブを始めた。
「この服買ったばっかりで気に入っていたのに、汚れたし、足も踏まれてめっちゃ痛かったし。」
もはやキレた理由がよく分からないが、とりあえず紘太くんがかわいそうだった(笑)
良心が働いたのか、聡汰がここで声を張り上げた。
「はい、カット!!」
するとあっちゃんは笑い始めて、仕掛け人達がみんなで「お疲れ〜」と声をかけ合った。
俺はこの瞬間までドッキリだと分かっていなかったのだから恥ずかしい...
紘太くんは、手に持っていたMiKASAのバックを地面に叩きつけ、
「うわぁ〜〜(やられた!!)」
と叫んだ。
それにしても、このときのあっちゃんは名演技過ぎてマジで怖かった...
この後みんなで学校の向かい側にあるファミマにたむろった。聡汰が謝罪していた紘太くんのモノマネをやっていた。
「さっきの紘太くんのモノマネしまーす!
『す、すいませんでした...』
こういったドッキリは何度もやってきたが、紘太くんにとっては一生忘れることのできないドッキリになっただろう。
もちろん俺も一生忘れない。
以上、ドッキリのターゲットではないのに、ドッキリにかかってしまった男の物語でした(笑)