そこ、座るところじゃありません!
お客様はよく店内で「ちょっと座れる所」を探される。だから店内にはあちこちに椅子やベンチが置いてある。有料ではあるがマッサージ機能の付いた椅子まである。
なのにそこまでたどり着けないのか、ところかまわず腰かける方があり、ビックリさせられることになる。
多いのがサッカー台に腰かける方である。
サッカー台というのは、スーパーで買った商品を袋に入れる作業台のことだ。高すぎず低すぎずの絶妙な高さと広さに設定してあるし、安定しているせいか、ちょこんと腰かける方がかなりの確率でいらっしゃる。尤もご年配の方で腰が曲がっているとか、背が縮んでしまって、なんて方は無理なので、中年くらいの男性に多い。土足で上がる訳ではないので汚いとは言えないのかも知れないが、食べ物を置く台に尻を乗せるのは見ていてあまり気持ちの良いものではない。まあ服を着ているから良いのだろうか・・・。でも混んでいる時はどいてもらいたい。邪魔だ。どっか椅子に座りに行ってくれ、と思う。世のお父さん方はそんなに疲れているのだろうか。
怖いのが商品の陳列棚に座る方である。お子さんのこともあるが、圧倒的にご年配の方、しかもかなりの高齢者に多い。陳列棚がしっかりした造りなら嬉しくはないが心配はしない。が、帽子やハンカチといった軽い商品の陳列棚はあまり丈夫でないし、骨組みも簡単なことが多い。いくら高さが丁度良いからといっても座る為に作られたものではないので、ちょっと尻を乗せるだけでも陳列用の板が外れたりして危険である。特に最近の陳列棚は、レイアウト変更がしやすいように考えてあるのか、発泡スチロールを多用したりした、軽くて簡単な造りの物が多いから、座ろうなんて考えない方が良い。余程立っているのに耐えきれないのだろうか。
座ろうと腰をかがめるお客様を運よく発見できた時は、全力でお止めしている。
鞄と傘の陳列棚は比較的丈夫であるが、座って欲しくはない。時々置いてある商品とやけにしっくりくる方が、マネキンのように座っていることがあり、ビクッとしてしまう。
押されて商品が床に落ちると汚れるし、お尻で踏んづけたりされると型崩れしたり、傘だと最悪骨が折れたりしてしまうので、こちらもお見掛けした時はどいて頂くように、丁重にお願いすることになる。
幸い、抵抗されたことは皆無である。皆良くない事とわかっておられるのだろう。
一番おやめ頂きたいのが商品を積み重ねた上に座ることである。そんな非常識なことする人がいるとは、私もこの職場に勤めるまで知らなかった。でも確実に存在する。
クッキーやお菓子などは、箱を大量に積み上げてレイアウトすることがある。販促用にちょっと階段状に積んでみたりするのだが、なんとこの『段々』に腰かける方がいらっしゃるのである。崩れて大騒ぎになるのは言うまでもない。私はその瞬間に遭遇したことが二度ばかりある。
勿論、そんな事をするのは子供・・・ではなく大人、やはり高齢者である。私が見たお二人は別に認知症でもなんでもなく、常識と非常識の判断はついているであろうと思われた。見かけたら即座におやめ頂くが、一度座るともう遅い。箱はつぶれるし、下手すればパンクする。大人一人がお菓子の箱に全体重を乗せると、悲惨なことになってしまう。
座った人も無事ではない。仰向けにひっくり返って、『犬神家の一族』で殺された佐清さんのように、みっともない姿をさらすことになる。打ち所が悪ければ、骨折などもしかねない。
潰れた商品は勿論廃棄することになる。勿体ない話でもあり、是非おやめ頂きたいと思う。
腰を下ろせる場所は、特に年配のお客様には必要だろう。夏はちょっと立ち眩みなどされる方も多いから、ひと休憩できるところがあるのは良い。
ただどなたも、くれぐれも『座る為に用意された場所』にお座りいただきたいものだと思っている。