駆け出しプロダクトデザイナーが『誰のためのデザイン?』を噛み砕いてみる
デザイナーの必読書と言われている『誰のためのデザイン?』は人間中心設計のアプローチを提唱した認知科学者ドナルド・ノーマンの著書です。
4月から保険会社で駆け出しプロダクトデザイナーとして働いているのですが、入社時に職場の上司におすすめして頂いてから、ついに最近読み終えることができました(長かった〜)。読後の記録として、デザイナーのバイブル『誰のためのデザイン?』を自分なりに噛み砕いた内容をまとめたいと思います💪
インタラクションの基本原則
発見可能性を得るための5つの要素
1)アフォーダンス
環境と人の間に生まれる相互関係のこと。
2)シグニフィア
人をある行為に誘導するためのヒントとなるアフォーダンスのこと。
電子書籍の場合には、しおりを挟むことはできないので、意図的に「あとどのくらいで読み終わるか」を検討するシグニフィアを作る必要があります。
3)対応づけ(マッピング)
操作手段と、その操作が及ぼす結果の関係のこと。
4)フィードバック
行為の結果を伝え、システムが正常に働いているかを知らせること
5)概念モデル(メンタルモデル)
あるモノがどう動くかについての簡素化された説明
これらの用語については下記の記事の説明もわかりやすかったです!
システムイメージとは
「機器がどのようにインタラクションするのか」の具体的なイメージのこと。これまでに得た概念モデルに基づいて構築されます。
デザイナーはユーザーと直接コミュニケーションを取ることができないので、ユーザーの持つ概念モデルとデザイナーのもつ概念モデルに乖離が発生しないために、「システムイメージ」を適切に提示する必要があります。
人間の行為の7段階のサイクル
「4.実行」「5.知覚」は最も基本的な本能レベルの処理であり、筋肉と強く紐づいています。「3.詳細化」「6.解釈」はこれまでの学習から形成された期待によって引き起こされる行動レベルの処理です。「2.プラン」「7.比較」は意識的な意思決定となり、内省レベルの処理にあたります。
これら「本能」や「行動」などの「情動に訴えかける設計」が成立しているインターフェイス上では、行為のサイクルが生じ、 ユーザーはコンテンツに没頭することができます(フロー体験)。フロー体験を引き起こしたい時には、自分のスキルレベルよりも少しだけ高いタスクをユーザーに与えてあげると、行為に一定の緊張感が生じ、没入体験に繋がります。
ヒューマンエラーの原因はデザイン
ヒューマンエラーの分類
エラーには、発生原因からみて下記の2種類があります。
スリップラプス
ゴールは正しいのだが必要な行為が適切に行われない時に発生します。日常における大抵のエラーはスリップラプスにあたります。
<たとえば>
・コーヒーにミルクを注いだあと、コーヒーカップを冷蔵庫に入れてしまった。(行為ベース)
・夕食の調理をしたあと、コンロのガスを消すのを忘れた。(記憶ラプス)
ミステイク
ゴールかプランが間違っている時に起こります。
<たとえば>
・燃料の量をキログラムではなくボンドで計算してしまった。(知識ベース)
・整備士が注意散漫で全ての故障点検ができなかった。(記憶ラプス)
エラーが起こりにくいデザインとは
デザインの段階で下記のような対策を打つことで、エラーを防止することができます。
エラーを防ぐために制約を加える
例)自動車の、稀にしか入れない液体の充填口はエンジンの充填口と離れた場所に配置してある
生じたエラーを発見しやすくし、また訂正もスムーズにする
例)ファイルを「削除する」とユーザーが選択しても、ゴミ箱から削除したファイルを回復させることができる
対象となっているものを目立たせる
例)「閉じるボタン」をホバーすると色が変わるなど、操作しているオブジェクトの外観を変えて、今の行為の対象がどこに当たるのかをユーザーに理解させる
要求された操作が合理的かどうかをチェックできる
例)1000ドルの振込を間違えて1000ウォンの振込で操作指示した際にユーザーの確認をとる
デザイン思考とは
デザイン思考は、ダイヤモンド・デザインプロセスモデルのように「①正しい問題を見つける」→「②正しい解決を見つける」という2つのフェーズでアプローチします。
人間中心デザイン(HCD)とは
「人々のニーズを満たし、製品が理解できて使いやすく、望みのタスクを完成させ、使用経験がポジティブで楽しい」ということを確実にするプロセス。
<人間中心デザインプロセス>
観察:対象の母集団をリサーチする
アイデア創出:制約なしにアイディアを量産する(ブレスト)
プロトタイピング:素早くプロトタイプを作成する
テスト:実際の使用場面になるべく近い方法でプロトタイプをテストし、アイディアの妥当性を探る
読後の感想
第4章での「制約」についての記述も面白かったのだけれども、本の内容事体があまりにもボリューミーなため、今回はインタラクションやエラーに関する絞って内容の噛み砕きを行いました。人間の行為の分解やエラーの発生原因など、プロダクトをデザインする中で「ユーザーにこの行動をしてもらいたい」「この行動をしてほしくない」といったときのヒントとなる考え方に触れられたように思います。
にしてもこの本、重い……………(笑)持ち歩くだけで筋トレですね……
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?