無主義では滅びてしまう〜『大國民讀本』を読む〜(4)
どこへ行くのか分からない活動や、方針のない努力ではダメだということくらい誰でも分かりそうなものですが、実際には無主義の人が多いことに驚きます。
部分的で一時的なことなら方針があるのだけれども、大局的(広いこと)で長期的(長いこと)な大方針となると、まったく考えられていない場合が多いのです。
たとえば、昼食に何を食べようか、今からどこを掃除しようか、その前にトイレに行っておこうか、それが終わったらどこへ行こうかといったことなら、はっきり決められます。
ところが、今日一日の方針となると、行き当たりばったりで不明瞭(ふめいりょう、はっきりしないようす)な場合が少なくありません。さらに、今年一年の目標を立てている人はもっと減り、人生を賭(か)けて何かを成すということになると、そこまで考えている人は皆無(かいむ、全然ないこと)といっていいくらいです。
だから、多くの人は大局的で長期的な大方針を持たず、何もしないで無駄(むだ)に一生を終えてしまうのです。その証拠(しょうこ)に、死んでしまったら何も残らず、死後数年もたったら名前は忘れ去られてしまいます。
このことは集団(人の集まり)をみても同じです。一人ひとりは方針を持って努力しているとしても、個人が集まった一家(家族)全体の方針や、一市町村の大方針となると、まったく無方針である場合が多いものです。
一国の大方針に至(いた)っては、あれこれ言われてはいるものの、はっきりこれだと納得(なっとく、よく分かること)し、国民の信念となるくらいまで徹底されているとはとても思えません。
主義や方針が確立していない個人は、決して成長しません。国家や民族(みんぞく)も同じで、無主義・無方針では、どうにも栄えようがありません。栄えなければ滅びてしまうのも当たり前で、「無主義では滅びてしまう」ということになります。
国家の実力(じつりょく、本当の力)は、国民の結合力(結ばれる力)にあります。世界の栄えている国は、まず「国の大目標」を確立し、国民がその大目標に共感し、一体となって努力を重ねています。つまり、大目標によって国民思想(国民の考え方)をまとめることが、真に国家を興隆(こうりゅう、勢いが盛んになること)させる根本となるのです。
イギリスは世界全体を見てきましたし、アメリカはヨーロッパからの自立を目標に掲げました。その他の国も、これから伸びるときは何らかの目標を持っており、それに向かって努力を重ねたのです。
手が動くのは手のためだけではありません。足が動くのも足のためだけではありません。手足は、その人の大方針(志や人生目標)に基(もと)づいて動いているのです。それと同じように、国民一人ひとりの活動も、国家の大方針につながるようでなければ意味がなく、国民全体の幸福には至(いた)らないでしょう。
だから、国家が一つの大きな主義を確立し、揺らぐことのない方針に進むのは、国家の繁栄のためであると共に、国民全体の幸福を増進するためであることに気付いて欲しいのです。
そうして、天から「あなたが進む目標は何ですか」と問われたとき、すべての国民が迷うことなく「日本人であるという事実をまず認め、日本国が持っている使命に従って生きていきます」と答えられるようでありたいものです。
〜『大國民讀本』を読む〜(5)につづく
昭和2年に出版された著書ながら、今読んでも新しく、胸に突き刺さる指摘ばかりです。新しいがゆえに、我が国の抱える病巣や問題の根が深いことが良くわかります。戦前の日本が良くわかる本『大國民讀本』
「林英臣の元氣メール(メルマガ)」で、こども向けに優しく噛み砕いて連載していた内容を、〜『大國民讀本』を読む〜として刊行しています。
これからnoteで、逐次紹介して参りますが、下記からお求めいただき、共に「日本の原点」を取り戻すべく、ご家族ご友人と学んでくだされば幸いです。
https://hayashi-hideomi.com/books
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