1年で10倍の成果を出したUbie製薬事業マーケの成功要因
こんにちは、Ubie株式会社の林です。
弊社は「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」をミッションに掲げ、医師とエンジニアが2017年5月に創業したヘルステックスタートアップです。
AIをコア技術とし、症状から適切な医療へと案内する症状検索エンジン「ユビー」と、診療の質向上を支援する医療機関向けサービスパッケージ「ユビ―メディカルナビ」等を開発・提供することで、誰もが自分にあった医療にアクセスできる社会づくりを進めています。
早いものでもうすぐUbieに入社して1年半になるのですが、去年の10月から異動して本格的に取り組んでいる製薬事業でのマーケティングについて、
成果が出てきたのでやってきたことや成功の秘訣を紹介してみようと思います。
(弊社製薬事業の組織は”Ubie Pharma Innovation”という組織名ですので、製薬事業のマーケチームを以下「UPIマーケ」と省略させていただきます。)
このnoteは主に
BtoBマーケティング責任者・担当者の方
特にエンタープライズ企業をターゲットするサービスのマーケ部門の方
上記になることを志している方、もしくは上記の方を支援する立場の方
のお役に立てればと思います。
1年でアポ獲得数は10倍〜主な成果〜
弊社のこの製薬事業は、本格的に立ち上がってからまだ1年半ほどのスタートしたての事業です。
私自身は1年前くらいから片足を突っ込んでいましたが、本格的に異動して製薬事業組織内のマーケチーム立ち上げを始めたのは去年の10月。そう考えるとまだ半年ほどです。
この半年〜1年でチームが出した成果を改めて振り返ってみると、
マーケ活動経由のアポ獲得数は1年前の10倍に
ハウスリスト内のコンタクト数は約2倍に
業界を牽引されるリーダーの方々が多数登壇・参加されるオフラインカンファレンスを実施
経営層との接点を多数構築
前四半期の全社Value Awardにて"Giant Leap賞"を、事業部Awardにて"Epoch Maker賞"を受賞
と、ひとまず良いスタートを切れたのではないかと思っています。
成功の秘訣
ではなぜ調子の良いスタートを切ることができたのか、その結論から書きたいと思います。
ちなみにこのnoteではあまり具体の施策内容については触れません。「この施策が上手くいった!」という紹介だけしてもサービスやターゲット属性によって再現できるかはわからないので、もっと根底にある秘訣について書こうと思います。
UPIマーケチームが、他企業のBtoBマーケティング組織と比較してユニーク・強いと思っている点は以下3つです。
Howではなく得たいゴールで役割分担をしている
Quick Winを集める探索とBig Winを獲得する集中を繰り返している
安定運用フェーズに乗った施策をゼロベースで疑っている
なぜこれが成功の秘訣になるのか、マーケティング組織が抱えがちな課題と絡めながら説明していきます。
BtoBマーケティング組織のあるあるな課題
私が正社員・副業含めて直接関わりを持たせていただいたBtoBマーケティング組織、そして情報交換などさせていただいた組織、さまざまな組織があれどBtoBマーケティング組織が抱える課題は大体以下のようなものではないでしょうか。
私自身何度もこれらの課題にぶつかり、上手く改善しきれなかったなあと後悔をいくつも持っています。
役割・機能が部分最適にとどまる・陥る
特にThe Model的なBtoBマーケティング組織ではリード獲得数をKPIとして置くことでそうなりがちです。
事業成長のためにマーケティングをしているはずが、いつの間にか目先の目標達成が最上位概念となり、事業成長につながらない部分最適になってしまいます。
リード獲得目標を達成するために、リードの質が疎かになる
セールスが質の低いリードに割く工数が増える
一方質が低いためすぐの受注につながらない
マーケは目標達成しているがセールスはしていない。忙しくなっただけ
という問題は、The Model型組織でマーケティングをしている方にとっては超あるあるなのではないでしょうか。
事業成長につながらない動きをマーケが取ってしまうのは全体最適としては避けたいものです。
また、事業成長につながる適切なリード獲得ができている組織においても、マーケが動かすことのできる変数のうち、リード数以外に全く手をつけず、ひたすら認知・リード獲得を追い求めているケースも多いと思います。
人が足りない、リソースが最適化されていない
加えてBtoBマーケターは需要に対してまだまだ供給が追いついていないので慢性的に人が足りない状況になりがちです。
それに加えて、本当に今いる人員を最適なリソースで配置できているかに疑問を感じる人も多いのではないでしょうか。
マーケティングは具体の施策1つ1つが特別なスキルやノウハウを必要とするものが多く、マーケ組織の中も役割が細分化されがちです。
その結果、キャンペーンに合わせたプロモーションやイベントなど、瞬間風速的にやりたいことがたくさんあるタイミングで、特定の1人が業務を抱えすぎてそれがボトルネックとなり成果が最大化されないケースがあったり、
お互いに独立した業務を行っているために双方でフォローや相談ができない状況も多いのではないでしょうか。
戦略とROI見積もりがないまま走り続けてしまう
特にリード獲得という文脈においては、戦略性がなくとも、Web広告などの最低限の知識と少額の予算があれば何もやっていない状態から成果を出すことは簡単です。
しかしそれゆえに戦略策定を後回しにしていると、一定成果が出た後にどうしても頭打ちになってしまったり、頭打ちになった時に打てる手を見つけられない落とし穴にハマりがちです。
さらにはROIを見積もらないまま採用やチーム編成を進めているために、頭打ちになったあとに撤退やリソースアロケーションが後手になりROIの低い施策を続けているケースもあると思います。
つまりどうなるべきなのか
とまあ、よくある課題を並べてみましたが、きっと多くの方が「あーあるね」と思っていらっしゃるのではないでしょうか。
このすべての課題をクリアすれば強いマーケチームができそうですよね。
課題をひっくり返してまとめると、BtoBマーケ組織として必要なことは
戦略性を持って中長期を見通し
事業成長につながるレバーを見極め
成長インパクトの大きいもの(短中長期の時間軸はあれど)から優先して
しなやかにリソースを最適化しながら進められる
ことだと考えています。
UPIマーケが現状持っている解
上記のような組織に近づく運営をしていくために、UPIマーケが行っていることが先ほど書いた秘訣です。
改めて書くと
Howではなく得たいゴールで役割分担をしている
Quick Winを集める探索とBig Winを獲得する集中を繰り返す動きを意識している
安定運用フェーズに乗った施策をゼロベースで疑っている
です。
詳しく説明していきます。
Howではなく得たいゴールで役割分担をしている
大抵のBtoBマーケティング組織はHowによる役割分担が行われていると思います。
例えば
全体を管掌しているマネージャー
デジタル担当
イベント担当
のような形です。
もう少しレイターフェーズになりさらに役割を細分化しているチームもよくあると思います。
しかしこの役割分担では、やはりどうしても部分最適に陥ってしまうと感じています。
なぜならコトに向かうべき、WHO/WHATに向かうべきマーケターが、HOWの足枷を課せられた状態を作ってしまっているからです。
例えばSEO担当が最終的な事業成長まで意識して常日頃の業務を行うのは簡単なことではありません。
他部門と連携したり、実際に検索するユーザーに話を聞いたりするよりも、キーワードプランナーを見て、情報収集して、コンテンツを作る方が楽だし、それで成果は一定出ます。SEO担当としては。
SEO担当というラベルに落ち着いてしまい、そのことだけを深く考えることに専念してしまいます。
例えばSNS担当は1年中SNSにリソースを投下し続けるべきでしょうか。
場合によっては、タイミングを見ながらSNSへのリソース投下に変化をつけ、空いたリソースでイベントをフォローしたり、SEOやメルマガに応用が効くコンテンツ制作に時間をかけたり、SNSの声に目を向けながら全く新しい事業や施策に思いを馳せた方がリターンは大きいかもしれません。
しかしSNS担当であるがゆえに他施策へのアンテナはあまり張られておらず、フォローに入るにしても引き継ぎコストが余計にかかります。
ということでUPIマーケでは途中まで決めていたHOWによる役割分担を撤廃しました。
あるのは得たいゴールとそのゴールへの進捗に責任を持つ推進担当の役割だけです。
そしてこの得たいゴールは事業部(UPI)全体のOKRと紐づく形でQごとに定義しています。
製薬業界の**%から****という認知を得ている
製薬業界の**の役割を持つ方**人と接点を持てている
プロダクトアップデートを踏まえて注力すべきセグメント・ターゲットが時間軸別に明確になっている
とか例えばこのような形です。
各ゴールにどのようにたどり着くか、そのPlanAは期初に推進担当者が考え、全員に共有し議論します。
その上で、実際にそのPlanを進めるために出てくるタスクは、都度最適な人員を週単位でアサインしています。(このスキームは、事業・プロダクト開発組織であるUbie Discoveryで行われていたスクラム開発のスキームをそのまま流用しています)
例えば1週間の流れは以下のようになります
得たいゴールの達成に向けて、必要なタスクを推進担当者中心に積む(誰でも好きなタイミングで積める)
その週に積まれたタスクを私が優先度付けする(スクラム開発で言うプロダクトオーナーの役割)
優先度が高い順にタスクの中身を全員揃ってMTGでチェックする(スクラム開発で言うリファインメント)
タスクの背景・Return・完了条件・やりそうなことを全員ですりあわせる
その上で「メルマガを1本作成して発出する」を”2”とした時にそのタスクにかかりそうなリソースを想像して全員でせーので言う
認識がズレていたら議論しながら最終的に「このタスクは”5”くらいか」と着地させる
1週間で現メンバーが処理しきれる量のタスクを”今週やること”として設定する
今週やることに積まれたタスクをメンバーに割り振る
各メンバーがタスクを消化する
上手く進められなさそうなものや他メンバーの方がノウハウを持っているものは雑に相談する
Dailyで30分MTGをして、今やっていることと困っていること・相談したいことを全員で話す
1週間後各タスクの進捗を全員に共有し、全員からレビューを受け完了する
もちろん毎週Facebook広告を運用する人が変わるのは非効率すぎるので、一定「これ系は誰々が得意」という線引きは自然とできてきます。
しかしチーム全体としてこなせるタスク量を一定に保ちながら、週単位で今最も優先度が高いことから順にリソースを投下することができるため、
とてもマーケティングとも相性の良いスキームだと感じて組織運営として採用し続けています。
Quick Winを集める探索とBig Winを獲得する集中を繰り返す
私たちが向き合っているのは、「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」という巨大な課題です。
まだ立ち上がったばかりの事業というのもあり、現状の延長と改善から前年比20%増のマーケティングを目指せばいいのではなく、常にBig Winを狙っていく必要があります。
まさに私たちのValueである”Giant Leap”を体現することを日々考えています。
しかし当然ですがBig Winは1日にして成りません。
戦略と戦術のシンデレラフィット、そしてお金や時間の適切な投下があって初めて生まれるものです。
しかし「これをこうやってこうやったら絶対上手くいく!そのために****万円使う!」「** ヶ月かけてこの施策を仕込む!」といった大きめのInvestはそう簡単に意思決定できません(するべきではありません)し、エイヤで決めたとしてもそれは博打です。
つまりマーケティングにおいてBig Winを狙うバッターボックスに立つためには、Investを惜しみなく行うべきWinの種を見つける必要があります。それがQuick Winです。
チームができた前後くらいのころは、とにかくQuick Winを探索することをメインに考えていました。
オンラインオフライン、さまざまな施策を試し、新たなチャネルを検証しました。とにかく検証可能な最小単位を決め、それをすぐに試す。
全く鳴かず飛ばずだった施策もあれば、一定上手くいって定期的に続けているものもあります。最初は絶好調で最速の受注につながりましたが途中から成果が出づらくなったものもありました。
その中で「これがBig Winの種じゃないか?」と出てきたのが本格的にチームとしてできた1ヶ月半後ほど。
そこからは種が出た施策にかなりのリソースを当て、全員で1つの施策を最速で実現しました。
スクラム開発の体制ありきだからこそできる動き方だったと思います。そのBig Winが全四半期の社内アワード受賞にもつながっています。
安定運用フェーズに乗った施策をゼロベースで疑う
ReturnのないInvestをしない。これは全マーケターが心に刻んでいることだと思います。
ReturnのないInvestは大抵わかりやすい見た目をしています。「さすがにこれはダメそう」という施策や「ちょっとやってみたけどうんともすんとも言わない」という施策です。
それに手を出さない・出しても止める意思決定自体は、そこまで難しくはないかもしれません(時に複雑な場合もありますが)。
一方タチが悪いのは、Returnが出てはいるしROI合ってはいるけど、大してROIが高くない施策です。
こういうHowには専門家が採用されアサインされることが多いでしょう。そしてROIを最大化しようと試みるのですが、そこまで改善されないケースもあります。
こういう時に
まあそれなりに上手くいってるし
◯◯さんがもっと伸ばしてくれるだろうし
このまま続けて様子を見よう
となってしまうのが大半です。
UPIマーケチームは、安定運用フェーズに乗った施策であれ時にゼロベース思考でストップします。
根底にはValueであるGiant Leapを実現したいという血が流れているからというのもあります。そのためにQuick Winを積んでいます。
そしてスクラム開発による柔軟なリソース調整がそれをやりやすくしているというのもあります。
その上で、半年くらいこれやり続けてきてるけど、このやり方の方がROI高そうじゃない?となったら最速でその方法を検証し、Plan Bに移行します
このスピード感は
検証方法と判断基準を決めるタスクを積み処理する(1週目)
翌週に検証結果を見て判断する(2週目冒頭)
Plan Bの方が可能性が高いことが分かり次第、Plan A関連タスクを削り、Plan B本格展開に向けたタスクを積む(2週目後半)
Plan Bに向けたタスクにメンバーをアサインし、新しい施策で走り始める(3週目)
と、半年以上実行し続けている施策に対しても、新プラン検証〜方針転換・リソース転換まで2週間で行い3週目にはそれでスタートしている状態です。
まさにスタートアップ!という感じで楽しいです。
ちなみに朝令暮改とは違います。なぜなら得たいゴールは変わっていないからです。
得たいゴールが変わっていなければ、登り方は常にアップデートしていくべきだと考えています(もちろん得たいゴールも途中で違いそうとなればアップデートしますが)。
まとめると
先ほどBtoBマーケ組織としてあるべき姿を
戦略性を持って中長期を見通し
事業成長につながるレバーを見極め
成長インパクトの大きいもの(短中長期の時間軸はあれど)から優先して
しなやかにリソースを最適化しながら進められる
と書きました。まだまだ完璧とまで言い切る自身はありませんが、UPIマーケは現状
組織OKRと連動した得たいゴールを定義することで中長期を見通し
Quick Winの検証でレバーを見極め
時にゼロベースで施策を見極め、見つけた種に全集中して
スクラム開発のスキームでリソースをハイスピードに最適化しながら進めている
というような形で、今日も組織運営を行いながら、より良いマーケ組織のあり方がないかを全員で模索しています。
We Are Hiring!!
そんなUPIマーケチームでは現在以下3職種の募集を行っています。
Marketing
接点の創出・継続的なリレーション構築・PR/ブランディングなどを目的に、オンライン・オフライン問わずあらゆる手法を通じて実施するポジションです
Strategy Lead
外部環境や市場情報、競合情報に社内のアセットなど、さまざまな情報から短・中・長期で取るべき戦略を策定し、アップデートし続けるとともに、その実行に向けた各部門との連携やディレクションを行うポジションです。
Communication Designer
製薬事業1人目のデザイナーとして、マーケティングチームに所属しながら、主にはオンライン/オフラインイベントのクリエイティブ(LP・バナー・イベント展示・ノベルティ・招待状DMなど)を制作いただくとともに、一貫性のあるブランド戦略とブランドデザインを作り業界でのプレゼンスを高めていくポジションです。
まだ立ち上がったばかりの事業・チームでかなり面白いフェーズだと思います。
Ubieがどういうことをやっていて、UPIマーケが何を目指しているかは同じマーケチームの重藤のnote「Ubie入社5年のBizDevが製薬事業で成し遂げたいこと~AIプラットフォーム構想の集大成〜」もご覧ください。
ちなみに、コーポレート組織でもマーケに関連する職種を募集しています!
ブランドマネージャー(Ubie Corporate所属のPR/ブランディング責任者)
何かご質問などあれば気軽にTwitterでもご連絡いただければと思いますし、カジュアルにお話ししたい方もぜひご連絡ください。
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