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ブル・マスケライト《仮面の血筋》100ページ小説No.3

前回までのあらすじ…


主人公たちばなは仮面の仕組みを考察した。そこへ今日から一個上に金髪の転校生が来た様子。
偶然か⁇それとも⁇
そんな極度の緊張の中、思考を巡らせたたちばなは倒れてしまう…



「おい、大丈夫か?たちばな!」
…ブッダの声がする。
「…」
目を開けると別の部屋のベッドにいた。
「俺が食堂から帰って来たら先生に連れられて保健室に行ったって聞いたからビックリしたぜ」
「あ、そうなんだ…わりー。」
「とにかくもう授業始まるから行くよ。また帰りに来るからー」
ブッダはさっそうと行ってしまった。なぜか保険の先生もいない…
「まぁ教室で仮面ばっかり見るよりずっといいか」
逆に安心して僕は帰りまでそのまま寝る事にした。むしろ起きた時にはいつも通りでいてくれと願った…


「おーい、迎えに来たぞー」
太い声がして目が覚めるとブッダと仮面の担任水口先生が起こしに来た。
「今日は特別に車で俺が送ってやるから」
いつもより優しい声で担任が言った。
「俺も乗してってくれるんだってー、ラッキー!」
僕は別にいいと言おうとしたが、あまりにもブッダが喜ぶので車で帰ることにした。
もう夕暮れが近く空は橙色に霞んでいる。ほとんどの生徒はもう帰ってる時間だ。3人は先生の白い軽自動車に乗り込み、車が校門を出ると担任が話をしてきた。
「なんだお前達、昨日遊び過ぎたんじゃないのかー?急に体調崩すなんてー?」
僕は黙って助手席から外をみてた。
「実は昨日、渋谷に行ってたんです」
「バカ、ブッダ言うな」
これは叱られると思い、先生の仮面を見たがもちろん表情は分からない。
「…ハロウィンだしな…」
以外と怒らずただ真っ直ぐに前を見ている。
「…ちょっと寄り道するから」
そういうと途中、2人の家とは違う方向へ車が進んだ。
車内にはよく分からないオペラのBGMが先生の仮面とリンクし奇妙な雰囲気を醸し出している。そんな中、15分もしないうちに車は停車した。
そこはあわナミの家だった。
「ちょっと待っててくれ」
そういうと先生はエンジンを切らずに車から降り、ポロシャツの襟を直してからインターフォンを押すとしばらくしてからあわナミの家にへ入って行った。
「今日休みだったからなあわナミ。先生いつも厳しいけど本当は優しいんだな。だって一日休んだだけで普通見舞いなんてこねぇもん!」
ブッダが言う。
確かにと思いながら2階の部屋を眺めていた。部屋は真っ暗で電気は付いてない。
夕焼けは落ち空はもう暗くなりはじめ周りも音がなくもの静かになり出すと外は鈴虫の声だけ鳴り響いているよう。ここからは少ししけもくの匂いがした車の中でただ待つだけの時間になりそうだ。僕は少し窓を開けた。それでも部屋の様子は変わらない。しばらく眺め続けた僕は言う。
「あわナミ、もう寝てんじゃない?」
そう言いながら後ろをみると、この5分で寝落ちしたブッダがいた。ズボンの裾がシワシワになってる。そういえば学校へ来る途中、川に落ちたんだっけ?靴もしっかり乾かず橙色がくすんでいる。僕は勝手に音楽を止めて静かな空を見上げてた。斜め上には満月になりかけの月がぼんやりと漂っている。月でさえ段々と仮面に見えて来そうで何処となくきみが悪い。直ぐに観るのはやめしにた。
 先生が入ってから15分、ようやく2階の部屋に灯りが付いた。何か様子が変わったのか?それでもまだ先生は出てこない。そこからさらに待つ事10分後、ようやく先生が戻ってきた。
「待たせたな、先に袴田の家な」
そう言いながら車をすぐ走らせた。
「文太、起きろー!」
「えっ?あ、ありがとうございました」
「まだ着いてないわい」
そのつっこんだ一言を聞いて仮面は着いてるが中身は先生だと少し安心した。
ブッダは家に着くと笑顔で帰った。
そして直ぐ近くのウチの前に車が止まる。
僕は仮面を見ずに車から降りると、
「明日の朝7時半にまた迎えに来るから、ゆっくり寝ろよ」
「え?」
そう言いながら直ぐに車は言ってしまった。
「迎えに来る?どうして??」
少し疑問を感じながらも家に帰ってこれた安堵感で余計な考えが消えていた。
もちろん家の中は真っ暗。とりあえず部屋中の電気を点け、制服を椅子にかける。いつもはTVをつけるが、なんとなくやめて携帯の音楽を流したままシャワーを浴びる事にした。
「あ〜とんでもない日だった…」
シャワーの音と遠くの音楽が心寂しく鳴り響く。
「きっと自分だけじゃないはずだ、明日は同じように見えてる人を探そう」
シャンプーを手に取り目をつぶると脳裏に碧色が浮んでくる。
「もうこれ以上の怖い経験はない」「大丈夫。俺なら乗り越えられる」
自分にそう言いかけ断ち切った。
「今日は2階へは行かない」
父のタンスから厚手のパジャマを取り出し、電気を点けたままリビングで寝る事にした。
「誰でもいい…誰か助けに来て説明してくれ」
そう言いながら頭から毛布に包みソファーで震えながら横になった…


 火曜日の朝、パジャマの効果か父の夢で目が覚めた。昨日は保健室でも寝たのにどうやらうまく寝れたようだ。なんの柄もないねずみ色の上下のパジャマが初めて愛くるしく思えた。そしてこのままいつもの朝食を用意する。目玉焼きを作りパンにチーズを乗せトースターへ入れる。
「粉チーズ忘れてた…。あんな体験したんだ、そりゃ忘れてもおかしくない…」
今日は買いに行こう。食べ終えたがまだ少しお腹が空いている。
「ピーンポーン」
突然インターホンが鳴った。ビクつきながらも出てみる。
「はい」
残念ながら仮面の人だ。先生か?しかし服装がおかしい。
「隣りの田村です~。お母さんからしばらく留守にするって聞いてたから肉じゃが持ってきたからね」
先生じゃなくお隣さんだ。急いで玄関を開けた。
「はいどうぞ」
しっかりとラップに包まれた大きめのタッパーに肉じゃがごろごろ入ってた。
「あ、ありがとうございます」
「ちゃんとご飯食べりんよー。またなんかあったら遠慮せず言ってねー」
僕は深々と頭を下げた。
「これはありがたい」
直ぐにリビングの机に置くとスプーンで食べた。母とはまた違う味で美味しい。久々に料理を口にしたと思った。残りは夜に食べよう。蓋とラップを戻し冷蔵庫に入れた。制服に着替えて先生を待つ。
しかしよく考えてみれば隣のおばちゃんも仮面…。これはつまり学校の人だけではないことが確定したことに今更ながら気が付いた…。酷くショックを受けながらもリビング以外の電気を消し行く準備を体がしてる。本能がそうさせるかの様に惰性でいつもの動きをしてしまう自分がいる。しかしもう7時半をまわるというのに未だ先生が現れない。とりあえず僕は玄関で待つことにした。

昨日とはまた違う列になって流れる細い雲達。それが余計に空を遠く感じさせて晴れなのにどことなく寂しい。本当は学校へ何て行きたくないのに先生が迎えにくるって言うから外に出てるのに…。
「まあ、歩いてれば来るかも」
ぶつぶついいながらも待ち切れずゆっくりと歩き出す。むしろ仮面の先生の横で車に揺られながら行くよりもまだ自分の足で歩いて心の準備をしながらの方がよっぽどいい気がしてきた。そして僕はいつものように細い曲がり角を曲がった。
「何だ、ブッダはいないのか」
ここの田んぼ道で見えなければまだ彼は家を出てない。渋々前へと足を進めると同じ様な景色がゆっくりと動き出す。道路の両隣りでは稲を刈り終えたザンバラな田んぼの上をでかいトンボ達が自由に飛び回る。いつもなら見飽きてなんとも思わない景色も全身がとにかく癒やせと言ってくるように自然の方へと目線がズレる。孤独でいたい気持ちと誰かにすがりたい気持ちが葛藤してるのが自分のチグハグな足音でわかる。
「ダダダッ」
違う音が後ろから近づいて来た。
「オッスたちばな、おはよう」
まさかブッダも仮面かと疑いながら振り向いた。大丈夫だ、こいつだけは。少し安心した。しかし彼は僕の振り向き方を不思議に思いながら話をしてくる。
「顔になんかついてるのか?今日納豆食ってきたから」
「まあそれくらいなら別に…」
仮面よりいい。そう思った。
「ん?なんかたちばな今日もいつもと違うな。ツッコミ弱いし」
「恋でもしてんのか?」
あえて僕は何も言わない。
「そうか、まだハロウィンが忘れられないのか?分かる、分かるよその気持ち」
勘違いをして一人頷いてる。そして何かを思い出しているその表情。実に分かりやすい。今こいつに仮面の話をすればきっとこう言うだけだろう。「今すぐ病院に行け」と。まあ他の奴に言っても結果は同じだろうが。とにかくこいつのノーテンキには救われる。そう思いながら話を変えた。
「そのうち先生が車で迎えに来るかも。昨日帰り際に言ってたから」
「やっぱ体調悪いのか?無理すんな、でもあの先生見た目と違ってほんと優しいなぁ」
「俺もそう思う。こんな時いつも怖い人ほど優しく感じる」
ブッダも納得だと言わんばかりの表情。
「でも先生、きっとお前だけ乗せてこう言うぜ。文太は歩いてこいって。分かるぜ、そーいうタイプだもん。ちきしょー」
妄想で悔しがれる姿に僕は微笑んだ。しかしいくら歩きながら待っても車が通らない。学校の用事ができたんだろ。そう思いながら歩き続けた。

 結局、二人は学校に着いてしまった。水口先生は来なかった。僕より少し期待してたのかブッダが下駄箱に靴を入れスリッパを床に投げつけた。もうすぐあの教室。すれ違った仮面達を見ると昨日と同じ光景だろう。期待もなく階段を一段ずつ上がる。上がるほど、少しずつ大きくなってきた黄色い声援が聞こえはじめ、二人は目を見合わせた。
「例の転校生だろう。あいつ昔TVに出てたらしいぜ」
どこから仕入れたかブッダが悔しがりながら言い放つ。女子にモテる奴への嫉妬心は彼の右に出る者はいない。僕らが2階に着くと黄色い声援は3階まで上って行った。
 そして僕はいつものように教室の扉を開く。異様な空気が相変わらず漂っている。
仮面をなるべく見ないように目線を落としたまま、席に向かう。途中で体操着が目に映り、座る前にカバンから取り出した。制服を椅子にかけ目を瞑り体操着を頭から被った。何故か昨日ここから観ていた運動場での金髪の転校生が頭によぎり、体操着の中で記憶の映像を確かめていた。そんな時、ふいに誰かの足音が近づいて来るのを感じた。
「何で2人とも着替えてるんだ?あわナミは昨日休みだからわかるけど、たちばなは昨日いただろ?」
あの林の声だ。頭まで被った体操着をゆっくり元へ戻し制服を着直す。横目で隣をみると黙って制服を手に取り教室を出て行ったあわナミの後ろ姿があった。前を向くと仮面の林が席にカバンを掛けている。
「一時間目、何だっけ?」
林に聞くと体育から美術に変わったらしい。とりあえず昨日そんな事いってたな風に言葉を濁しごまかした。
「キーンコーンカーンコーン」
チャイムと同時に後ろのドアから体操着を手に持った仮面が隣の席に座った。何処かであわナミは着替えてきたらしい。
「そうか…やっぱりあわナミも仮面だったか」
今初めてあわナミも仮面だと気付いた。ブッダと同じようにあわナミも仮面じゃない事を少し期待してた僕は、ガッカリした。しばらくすると仮面の先生が教室に入って来た。雰囲気的に女性の先生で担任の水口じゃなさそうだ。髪も長くスレッドがかかり紺色のスカートを履いてヒールの音がしている。
「えー今日は担任の水口先生はお休みですので代わりを私がつとめます」
「ちなみに一時間目が美術になりましたので、皆さんにはスケッチを描いてもらう予定です」
 今日だけ担任が美術の福良先生になったらしい。急な休みで水口先生は朝迎えに来れなかったんだと理由が分かり納得をした。
いつもの威圧感あるピリついた水口先生の声とは違う丁寧にな口調が、教室中を優しい雰囲気にさせてくれているのが分かる。もしかすると目以外でも情報を得ようと五感が発達し自然と耳が敏感になってきたかも知れない。
そんな風に考える僕の気持ちとは裏腹に、窓から差し込む光が先生の仮面を余計に碧く照らし不気味さが増していた。僕にとっては仮面のせいで異様な世界にいる事は変わりないと一瞬だけ芽生えるプラスな思考もすぐに消滅させられる。
「お休みの人はいないみたいですので、すぐに一時間目の美術の時間としますね。隣の人と向き合うように机の向きを変えてください」
「え?スケッチってもしかして…?」
僕の嫌な直感は直ぐに答えが出た。
「ちょうど男女で隣り合わせですので、鉛筆でお互いの『』を描いてみましょう」
全員がざわつき出した。

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