【終】気軽にドラマ感想文『ラストマン』
話を冒頭に戻す。
実のところ先に刺したのは相武紗季の方だった。
〈この人の子です〉
〈この人の息子がいたから、ここまで生きて来れた〉
ただ本当のことを言わず、病で死ぬなんて納得できなかった。真実は、自分の本当の気持ちは音にしなければ伝わらない。自分の心だけは縛られない。その宣言は先のものと合わせて3度刺したようなものだった。だから男は殺すことを躊躇わなかった。失恋は脳が物理的な痛みを受けた時と同様の反応を示すと言うが、純粋な失恋と言わずとも、その行動は凄まじい痛みに反応した防衛本能にも思える。
生殺与奪。
何を生かしたいと思い、そのために何を捨てるか。
循環する。自分自身の納得する生き方のために、取り込むものを選び、不要なものを排除する。全ては本当に大切にしたい人にあげるために。
ラストマン。それは全てを貰い受けるに相応しい者のことをさす。