【イベントレポ】「親の年金をつかってキャバクラ SWING EXPO」東京展②
この記事の続きです。
お次はGさん。
この時私は途中まで、スウィングの趣旨をちゃんと理解してなくて。なんだろうこの集団…と漠然と思ってたんですが、このあたりでやっと「福祉の団体」ということに気付くというアホっぷりでした。
Gさんは最年長のスウィングメンバーです。このGさんにまつわるエピソードや、Gさんの言葉が展示されてました。
中でも印象に残ったのがコレ。
「運が悪い」
これなあ。私も真実だと思う。他人の不幸は蜜の味かはさておき。
しかし正直な人やなあとか腹立つなあとか、言いながらも向き合ってるスタッフの様子とか、なんとも言えない雰囲気のある話。
早々に悟らざるを得なかったのか何なのか。果たして。この視点を得るに至った経緯が知りたいです。知れないけど。
他にも、笑える話がたくさんあって「ワオ!」の話とか、もっと写真撮ればよかったなあ。
ちなみに、この文章の中にめちゃくちゃ鋭いツッコミが端々にあって、最初「怒ってるのかな…?」とおもって読んでたんですけど、途中で主催の木ノ戸さんに話しかけられたときに「これってイラっとしないですか」って聞いたら、「全然しないですよ」て言われて。
お話一通り聞いた後にまた見返すと、「ああ、これ関西のツッコミのノリか」とやっと気付くことができて、笑いながら読むことができました。
このノリは地域によっては文字では伝わりづらいというか、特に関東の人はそうなのかなって思いました。
実際、地域によって反応が違うらしいです。京都だとめっちゃ笑う人多いけど東京の人は全体的に静かにクスクス…って笑うくらいだとか。
お次は別会場「マジェルカ」にて「紙」。
余談ですがこの別会場の「マジェルカ」さんは、1階が障がいを持つ人たちが作った雑貨を販売するお店で、ギャラリーは地下1階でした。
紙の展示ということで、これまで発行したフリーペーパー「Swinging」が展示されています。(この辺りから物心ついてきて、やっと展示の風景を撮り出す)
ここに置いてあるものは過去に発行したものなので閲覧用の見本誌しかないそうです。もうコラムとか対談とすごく興味深かったんですが、もうね、腰が痛くて全部は読めなかった。笑
次は椅子をお願いします…^q^
本当いうと誌面デザインも素晴らしいのでぜひ紙で読みたかったんだけど、内容はスウィングのブログで無料で読めます。
全体的にゆるい雰囲気なんですが、外部の福祉関係の方やスウィングと関わっている方が寄稿しているエッセイのサブタイが「クソ真面目エッセイ」とあって「うん、たしかにクソ真面目だよね」と笑ってしまいました。
なんかこう、こういう言い方してるとバカにしてるのかって言われそうだけど全然そんな意図はないと思うんですよね…。実際全体の雰囲気からしたらクソ真面目だけど、それも必要。むしろ自虐ですらあるんじゃないかと。
「笑ってはいけない、不謹慎だ」って言うのは、笑われた当事者が言うのはいいけど、当事者でもないのにまるで自分が正義の人みたいに言って正論振りかざしたりするのって、世の中をつまらなくしてるし、表現する人を萎縮させる。
私もそう言うこと言われたことがあって。間違ってるって思いながらそこに反論する勇気がなくて(自分も当事者じゃないから)、随分と萎縮させられてきたので、スウィングに解放してもらった感があります。取り戻したと言うべきか。
とか思ってたら、木ノ戸さんがすでに同じようなこと書かれてました。笑
「誤解を生むこと、大真面目にふざけること」(ブログ記事)
フリーペーパーの他にもう一つの紙
「京都市人力交通案内」。
こちらは、京都市バス網を丸暗記しているお二人が、観光地に実際に出向いて、迷っている観光客にその知識をフル動員して観光案内をするサービスということ。
で、それを紙に書いて渡すので「紙」の展示なんですね。
確かにスマホで調べればわかるけど、それだけじゃわからない「本当はこう行った方が早い」とかそういうファジーな知識もあって、それは人力ならではだなあと。
たとえば京都だけじゃなくて東京だって、地下鉄で同じ駅名なのに乗り換えに一駅くらい歩かされるとかあるし、そういうのは乗換案内のアプリじゃわかんない(ハメられた経験アリ)。
「わかりやすい」と言われている東京でさえそんななのだから、観光地密集、複雑すぎる市バス網の京都市なら、迷う人の方が絶対多いに決まってる。
そういう時に、頼れる存在ってすごくいいなあって思う。
元々はスウィングに来てくれていた人に、口頭で道案内していたものを「これ使えるんじゃない…!?」と思いつきで始めたのがこの京都人力交通案内。
しかもユニフォームがあって(上部写真パネル参照)、実際に観光地に立つときはこのユニフォームと制帽をかぶるんだとか。
ゴミコロレンジャーもそうだけど、思い付きで始めたことに、ちゃんと形を整える、形から入るっていうことにすごくこだわってるの、すごくいいなあと思いました。
形から入ることで気合も入るし、やってる感もある。周りからの信頼感も生まれるし、テンションも上がるよね、っていう。
あと丸暗記しちゃう系の人って、知識の収集方法はわかるんだけど、それの活かし方までは頭が回らないことが多い。わたしも含めて。こういう風に活かす場所を作ってもらえるのはすんごいありがたいことだなーと思います。
お話しさせてもらったこと
展示を見るだけではわからないことも、主催の方からお聞きできました。
市民ギャラリーの方では主催の木ノ戸さんに声をかけられ、メンバーがスウィングに来るまでのエピソードを話していただきました。
ちらっと私の身の上話もしてしまったんですが、話すと長くなるのでさわりだけ「3年くらい引きこもってて…」的なことを言ったら「この人なんて15年、20年ですよ」って話をしてくれて。
その途方も無い年数に「自分なんかまだまだやな」と思いましたし、実際そう口にしたら木ノ戸さんにも「そう、まだまだ。3年とか全然ですよ」って言われました。
誤解を恐れずに言うと、その時「わたしの苦労も知らんでこいつ何言うとるんや」という気持ちは一瞬ありました。でもそれはなんていうか過剰反応という自覚もあります。初対面の私の辛さを知らないのは当たり前だし、木ノ戸さんが言いたかったのはそういうことじゃないってのもわかります。
実際、私の世界は狭いし、まだまだやなって思い知らされましたもん。それはそれとしてちょっとイラっときたけど。笑
だって本当は三年とかじゃない。あとでフリーペーパーでコラム読んで知ったんですけど、わたしも木ノ戸さんと変わらんくらいの頃からずっと不登校ですよ!笑
まあ、それはいいです。
それに、木ノ戸さんの「まだまだですよ」という言葉、言い方には、メンバーへの敬意も感じられたんですよね。口では「イカれてる」って散々言っててましたけど(実際そうも思ってるんやろうけど)それとは別に、人としての敬意もちゃんと持ってるんやろうなあって感じました。
相手を「イカれてる」と思うことと「敬意を払う」っていうのは両立できます。敬意というものは言葉じゃないですから。
それを踏まえて以下、悪意ゼロ、本音全開、好意少しで木ノ戸さんの印象を書きます。(大したことないって言われた腹いせかもしれない。笑)
もうね、ご本人には多分伝わると思うんであえてここに書きますけど、初めて見たときは「あ、なんかこの人、目の奥に虚無がある」って思いました。病んだことのある人の目ってこんなの。ブラックホール。いや、黒豆かも。
あとでマジェルカ会場でフリーペーパーのコラム読んで「やっぱりか。この人頭良すぎて生きづらい人やん」ってわかってなんか腑に落ちました。
わたしは多分木ノ戸さんほど頭も良くないけれど、木ノ戸さんの想いには共感できます。機会があるならもっと腹割って話してみたいとも思いますが、引きずり込まれそうで怖いという気持ちもあります。二律背反。
あとnote書いてください、ぜひ。あなたの文のファンです。(私信)
あとですね、これはマジェルカにいらしたスタッフの方にお聞きしたんですが、いろんなエピソードを聞いて行くうちに「揉めることとかないのかな」と。
「もちろん揉めることもいっぱいあります。誰と誰が喧嘩したとか。でもそういうことがあっても、全部オープンなんですよ。最後までちゃんと言い合いしたり、それをみんなで話し合いしたり。周りが冷静に「それは違うと思う」って言ったりとか」
「で、そういう風に続けて行くと、怒ってたのは実は相手に対してじゃなくて、自分が気に入らんことをすりかえて八つ当たりしてただけだった…みたいなことに本人が気づくこともある」
私はこれを聞いて、傾聴と似ているなって思いました。傾聴はとにかく聞く、スウィングの場合は言い合う、という形をとっていますが、一見真逆のように見えて「感情の放出を許す、受け入れる」という本質は同じだなと感じました。
「いつも冗談言ってて楽しいんですけど、その反面、忙しくしてるのに空気読まずに話しかけられて、めちゃくちゃうざい時もあります。でもうそういう時は、わたしもイヤホンします。自衛です。相手を責めたりはしないですし、相手に求めてたら自分が辛いだけですから」
ともおっしゃってました。これって一見諦めのように見えて、そうじゃなくて。自立なんですよね。ほんとに。
上の言い合いのところと矛盾してるようでしてない。そこはそれ。自分の中で処理したり自衛できる分はちゃんとする。相手ができないことを相手に求めない。これってすごい健全な人間関係のあり方やなって思うんです。
「自分ができることを他人もできると思いこむ」っていうのは、人間がやりがちなことだけど、逆も然りなんですよね。「他人ができることを自分もできると思いこんで必死にやろうとする」のも同じくらい苦しい。
特にそれが社会的に当たり前にできる人が多い場合「できない」ことに気付くことすらできない。(家事炊事、家計管理、毎日会社に行く…とかね)
表題の増田さんも「お金の管理ができないから人に頼む」とか、他にもXLさんだったと思うんですけど「引きこもってしまうし、行かない連絡もできないからメンバーに合鍵を渡しておく」とかね。
「助け合い」というときれいごとに聞こえるけど、そうじゃない。本質はもっと人間らしいし身近だし、しんどいし、簡単なことじゃない。
「できないことを認める、手放す」というのはすごくしんどい。
逆に、「自分にはできて当たり前のことを他人ができない姿」を見ているのはもどかしい。
そして「他人のできないことをやってあげる」というのは、余裕がないとできないこと。ともすれば押し付けにもなりかねない。
だから「お互い様」である必要があるし「認める」必要がある。そこが欠けてるから、みんな生きづらいんじゃないかな。障がい者だろうが健常者だろうが関係ないと思う。
そしてその一つの答えが、スウィングにはある気がする。
わたしもこんなえらそうなこと言ってるけど実際はまだまだで、全然手放せてない。でもヒントをもらえました。具体的にどうしたらいいかはこれからなんだけど……。
実に興味深かったです。ありがとうございます。
まとめ
細々とした感想はもう述べているんですがあらためて。
「弱さ」を受け入れる、「弱いまま」でも生きていく。
「わからない」ままでもいい。
これらの言葉は、わたしにとってはものすごい衝撃でした。
今まで「強くなりたい」「真理を知らなくては」とか、そういう想いに縛られてきました。でも「知らない、わからない」でもいいんだなと。
わからないままでも生きていていい、と。
許された気がして、泣いてしまいました。
そうして許されたおかげで、逆に今度はその「探究心」を性分、好きなことだと受け入れることができたし、「探究」が辛くなったら休んでアホになろう、とも思えました。
「探究心」って「ネガティブ」と紙一重で、知識を大量に取り込む分、逆に知りすぎてすぐ虚しくなるんですよね。現実感がなくなる。でも、スウィングに出会えたおかげで、現実に戻るとっかかりができた気がします。
そして、「生きづらさをユーモアに変える」というコンセプト。
すごく共感します。
ユーモアに変えると、苦しみは軽くなる。
そして、軽くなったら手放せるし、受け入れられる。
「これ不謹慎かな……」とかって怯えて表現を縛るよりは「いやマジくだらんわこれww」って客観視して笑えた方がいい。
また「辛さを笑う」のはともすれば「ブラックジョーク」とも言えるけど、「嘲笑」と似ているようでその本質は少し違う。
うまく言葉にできないけど、伝わる人には伝わると思う。
そしてきっと、笑えたほうがずっと生きやすい。
わたしも「こんなくだらないことで笑う自分はおかしい」と思っていた部分があったんですが、それを「くだらん、寒くても恥ずかしくてもいい」って思って口に出すようにしたら、旦那との間に笑顔が増えました。
それに、笑いだけじゃないです。
言葉にしたり、人に話したり、小説として世に出したりすることで、解放されていくことってあると思うんです。ぶっちゃけ、その中で「笑い」だけが不謹慎とされがちなのは変な話ですよ。
小難しいこと好きな人向けに言うと、これらは本質的な共感や理解、受容の形でもあると思います。
余談
この展示というかスウィングという団体のコンセプトをよく知らないまま突撃したので「福祉関係の方ですか?」とか聞かれて「どうしよう……無縁なんだけど」と微妙な疎外感を感じていました。笑
そしてスウィングのコンセプトと実像を理解したのは、マジェルカの展示でフリーペーパーを読んでからっていう……この……鈍さ……笑えよ。
マジェルカがどんな店かも帰りに気づいたんだぜ。この余裕のなさ。はあ。
ちなみにマジェルカにいらしたスタッフの方は、芸大出身で、この展示の設計とか準備とか、フリーペーパーの構成とかを担当されていた方でした。
ずっと、展示内容のゆるさと、それに対して計算づくの展示の構成に絶妙な違和感というか、専門時代の卒制展のような懐かしい空気すら感じていたんですが、それを聞いて納得がいきました。
そして、実はこの日、本当に生まれて初めての経験をしました。
こういう展示に心から興味を持って行くっていうことがそもそも初めてでした。そして、実際にこうして主催者側の方とお話をさせていただくという経験も、それを自分ごととして捉えられるのすら初めてでした。
物心ついたばっかりなんですよ、ほんと。
おまけに展示見ながらこんなに泣いたのも初めてで。
会場、誰もいなくてよかった。笑
本当は土曜日にあったトークも行きたかったんですけど。
すみません、体力的にやっぱり無理でした。トーク聞きたかった……。
ちなみにスウィング主催者の木ノ戸さん、年明けに新しい本も出されるそうです。買います。もしご興味ある方はどうぞ。
*
相変わらず、感じることが多すぎて、毎度長い感想ですみません。
っていうか書いてる間にも思うことがいっぱい出てきて止まらなくなりそうだったのでこのへんで締めます。笑
わたしが感じたもののひとさじでもおすそ分けできたなら幸いです。