事例から学ぶ共創のポイント——DX自動販売機PRENOと住友商事商業施設事業部
大企業とスタートアップとのコラボレーションを進めるには、さまざまなハードルが存在します。スタートアップと大企業は、それぞれのミッションを成功させるために、どのような対応を心がけるべきでしょうか。
今回はHAX Tokyo Batch 4の採択企業の一社であり、次世代自動販売機を開発するPRENOと住友商事 商業施設事業部によるコラボレーション事例をご紹介します。
※本記事は去る2021年12月15日に開催した「HAX Tokyo Online DemoDay」から、一部を抜粋してお届けします。
PRENOは大型モニターを搭載した自動販売機を開発するスタートアップです。商品を一つずつ選択・決済(支払)する従来の自動販売機と異なり、複数の商品を選択した上でキャッシュレス決済に対応しているのが特徴です。現在はコスメ用品を中心に様々な商品を取り扱い、東京都内の大手商業施設や空港に、自動販売機を設置しています。
HAX Tokyoに参加するにあたってPRENO代表取締役の肥沼芳明氏は「より幅広い年齢層にリーチできる商品を扱うと同時に、都市圏だけでなく地方都市にも商圏を広げたい」という希望をHAX Tokyo側に伝えていました。
そこでHAX Tokyoの運営企業の一つである住友商事の商業施設事業部をマッチングした結果、埼玉県所沢市にある商業施設「グランエミオ所沢」で、地元名産品を扱った自動販売機を展開することが決まりました。
「なんかスゴそう」だけで終わらせない工夫
共創のきっかけを振り返り、住友商事 商業施設事業部の枝川宏樹氏は商業施設が抱える課題に触れました。
両者をつなぐ際のポイントは何だったのでしょうか。HAX Tokyoの担当者である藤牧友は、スタートアップと企業の間に立つ通訳として機能することが重要だったと振り返りました。
同時にスタートアップに対しては紹介先の事業部の情報や抱えている課題を共有し、どのような提案であれば相手に響くかといった作戦会議を入念に行うことで、双方の目線が揃うような準備を心がけました」
一方で肥沼氏もスタートアップ自らが視座を高めることが重要だと指摘しました。
一方の枝川氏もPRENOが持つ可能性は商業施設に留まらないとしながらも、いきなり規模を追い求めるのではなく、着実に実績を積んでいく協力関係を重視したと語りました。
双方がお互いの立場や考えを理解しながら足元のビジネスと、将来像の目線を揃えていくことが共創においては必要なプロセスだと思います」
所沢での事例をきっかけに共創を継続したいと双方が語り、セッションは終了しました。
大企業側にはアセットや商圏、そして事業継続する上での課題があり、スタートアップにはソリューションとなる技術がある一方で、双方をなめらかにつなぐために「通訳者」が果たす役割も決して小さくありません。企業との共創を実現し、着実に成長したいスタートアップをHAX Tokyoは今後もサポートしていく予定です。
HAX Tokyoとは
HAX TokyoはSOSV、SCSK、住友商事の共同運営による、ハードウェアに特化したアクセラレータープログラムです。
採用されたチームには、米国シリコンバレー発、世界的に実績のあるハードウェアアクセラレーター「HAX」にて蓄積された知識やノウハウが提供されます。また、ハードウェアに特化したコミュニティが提供され、ビジネスおよび製品開発の分野で世界をリードする専門家や、住友商事をはじめとする日本のパートナー企業とのコラボレーションの機会が得られます。
さらに、3ヶ月後のDemo Day後には、HAX Shenzhen(中国)、HAX San Francisco(米国)に参加し、ベンチャーキャピタル等から資金を得て事業を拡大できる可能性があります。
詳しくはウェブサイトをご覧ください。
HAX Tokyo オフィシャルウェブサイト https://www.hax.tokyo/
Twitter: https://twitter.com/HaxTokyo
Facebook: https://fb.me/haxtokyo
取材・文:越智岳人(シンツウシン)