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昆虫は身を助ける

昔、新宿に出店していた外国の高級食器の店に行ったことがあります。

テーブルの上に置かれたハエ型の食器(?)が、展示してありました。

まさか、不衛生の象徴であるハエを使うとは、逆転の発想だと感心しました。

日本では考えられないと、しばらく立ち止まって、そのハエ型の食器を眺めておりました。

これは単なる置物ではなく、なんらかの使用意図があるのではないかと、推理しました。

うーむ。

腕を組んで考え込んでいた私に、背の高い男性店員が近寄ってきました。

「何かお伺いしたいことがおありでしょうか?」

降参して考えるのをあきらめた私は、店員に聞きました。

「このハエの置物は斬新です。一体どのように使うものでしょうか?

店員はあぜんとした顔をしました。

「お客さま。これはハチでございます。この部分が蜂蜜入れです」

胴体のところにふたがあり、店員が長い指でふたを開けるとガラスの容器になっておりました。

確かに、蜂蜜入れとして使える構造になっていました。

しかし、平たい羽が2枚しか付いていません。

ハチであれば、羽は4枚でなければならないはずです。
2枚ならば、ハエかアブです。

宮崎県椎葉村でつちかわれた私の昆虫の知識が、ダメだしをしていました。

「ハチであれば羽の数が足りません。これは昆虫学的にはハチとはいえません。おかしいです」

先ほどまで勝ちほこるような優位性を保っていた店員は、困惑の表情でした。

「そうおっしゃられても、これはあくまでも蜂蜜入れでございます」

私の必死の抗議は受け入れられず、店員は立ち去っていきました。

この高級店は、既に新宿から撤退しております。

ハエ型の蜂蜜入れをネットで探しましたが、出てきませんでした。

おそらく、昆虫に詳しい客からクレームが出て、製造中止になったのではと想像しております。

今にして思えば、超激レア商品であり、このとき買っておけばよかったと後悔しています。

ただ、値段を見ておりませんので、いくらだったか不明です。

聖路加国際病院のハエのレリーフ。素晴らしい

大学生の頃に、テレビのCMで国蝶のオオムラサキが飛んできて、花にとまるという映像が流れたことがあります。

そのときに「このCMはおかしい。オオムラサキは樹液を吸うので花にとまることはない」と指摘したことがあります。

一緒にいた友人からは、「何をわーわー言っているのか。別にええじゃん。しょーもないことにこだわって」と、あたかも変人扱いをされました。

いや、昆虫好きからすると許せないものだったのです。

間もなくして、このCMは流れなくなりました。

おそらく視聴者から指摘があったのだと思います。

樹液を吸うオオムラサキ

すいません。今日はクレーマーのようなことを書いてしまいました。

しかし昆虫が好きだったことが、仕事に役に立ったことがあります。

厚労省のがん対策・健康増進課長のときに、局長に随行して、がん対策の協会の会長にご挨拶に行きました。

お部屋には、昆虫の標本箱が飾られていました。

局長が、「いやいや、これは素敵な蝶ですねー」と昆虫の標本について褒めました。

すると、会長が「この蝶の名前が分かりますか?」と質問をしてきたのです。

局長は「いやいや、あいにく私は昆虫は苦手で……。ああそうだ、課長は詳しいのかな?」と横にいる私に振ってきたのです。

私には、見覚えのある蝶でした。

「キベリタテハ、イチモンジチョウ、ミスジチョウ、ですかね」

すると会長は驚いて、次なる質問を投げかけてきました。

「この中には一種類だけ違う種類の蝶がいます。その名前が分かりますか?」

見ると、アオスジアゲハがならんでおり、似ているのですが、一頭だけ模様が違う蝶がいました。

私は、その蝶を指さして答えました。

「ミカドアゲハですね」

これ以降、局長は私にはなにも言ってこなくなりました。

これ以降、会長は、がん対策について、よく相談の電話をかけてきました。

議員立法で成立した「がん登録法」のときは、新聞に書いて法制化を応援をしてくれました。

昆虫は身を助けます。

昆虫の本は、私的には、北杜夫さんの「どくとるマンボウ昆虫記」が最強です!
漫画としては、以下がおすすめです。

ロン先生の虫眼鏡
私が中高生の頃に少年チャンピオンに連載されました。

昆虫鑑識官ファーブル
警察もので、警視庁のアンリ警部補が可愛いかったのを覚えております。

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