非当事者研究への脚注その6

 「非当事者」の具体的な使われ方について以下で見ました。

言い換えると「非当事者」は単に「当事者でない」と事実確認的に使われるのではなく、「あなたは当事者ではない」といった行為遂行的に使われます。こうした「非当事者」の用法は「非国民」の用語を思い起こさせます。

 誰かを「非国民」と名指すことは同時に自分こそが「国民である」と名乗ることでもあります。そこには「国民」とそれ以外との間に序列を設けて、マウントを取ろうとするものでしょう。しかし逆に言えば、自分が「国民である」と名乗るためには、誰かを「非国民」と名指さなければならず、「非国民」への依存という歪さを抱えています。また「非国民」は「国民以外」すなわち「外国人」に向けられるよりも、同じ国籍の者に向けた非難としても用いられます。その意味では事実確認的どころか反事実確認的に使われているとさえ言えます。

 こうした「非国民」の用法とのアナロジーから考えると、「非当事者」も同様で、「当事者以外」を否定することによって「当事者である」ことの優位性が確認され、「非当事者」もある種の「当事者」に向けて使われているのかもしれません。

 「非当事者」を「非国民」のアナロジーとして考えること自体にかなり拒否感を持たれるかもしれません。しかし規模の大小はあれ、あるまとまったコミュニティに起こる排除の現象として共通している点もあるでしょう。それでもなお「非当事者」が「非国民」と異なるとすれば、それは「非当事者」として弁える倫理が考えられます。

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