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誰かが並べた松ぼっくり。

 いつものように、神社にお参りをして参道を歩く。
 今日は特に寒くて、耳の先から凍っていくような風が吹いていた。

 今年は暖冬で、もうあちこちに春の兆しがあるかと思っていたけれど、散歩する日を間違えたみたいだ。

 そんな風に思いながら、縮こまっている桜のつぼみを見上げていた。

 ふと、参道脇を見ると、一か所に松ぼっくりが集められていた。

 まだ赤茶色くて、開ききっていないもの。もう薄灰色になって、風雨にさらされたもの。

 どれも大きくて、泥まみれという感じはしない。

 ああ、きっと誰かが集めて、ここに並べたのだろう。

 しばらく、腕を組んで考える。

 誰だろう。裏手にある、保育所のこどもたちだろうか。
 いやいや、今日は日曜日。保育所はおやすみのはず。
 であれば、近所の子かな。いっぱい集めたけれど、全部は持って帰れませんって怒られたのかも。
 私も、よく怒られた。実は、いまでも拾って帰って怒られることがある。ちゃんと置いて行けるのは、すごく偉いことだ。見習わねば。

 あるいは、こういうのはどうだろう。

 春を待つちいさなものたちが、おみせやさんごっこをしようとして、まつぼっくりを並べたのだ。一つ買うごとに、春風をびゅうっと、お願いします。それか、ぽかぽかした日。シロツメクサを咲かす陽気。
 綺麗で大きい松ぼっくりと、交換してください。

 なんて。

 まだ、春を望むには少し気が早いかもしれないけれど。でも、皆春を待ち遠しく思っている。春が来るから、冬が楽しい。縮こまる寒さも、家の温かさを思うと、楽しめるのと一緒だ。

 そんなことを考えていたら、びゅうっと、北風が吹いた。

 春風と言うよりも、北風小僧の寒太郎。

 誰かが並べた松ぼっくりを、今日は拾わずに帰った。

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