君。
友よ。
思春期をともに過ごした君よ。
悟り顔で何にもあらがわなかった君よ。
それでも、心に何かを秘め続けていた君よ。
私たちは、偶然同じクラスになった。自然と別れていく幼い仲間意識の中で。互いを拠り所とした。
それは、ただの生存戦略だったのかもしれない。
互いが互いを利用していただけかもしれない。
でも、友よ。
思い出すのも億劫な、制服に形造られた日々の中で。君に会えたことだけは、確かに幸運だった。
間違いだらけの人生で、間違いだらけの思春期で。誰も味方なんていなかった。私たちはいつだって、ホームへ入ってくる電車の、その車輪が線路と擦れる甲高い音に、誘われていた。
友よ、だけれども。唇を噛み締めながら乗った通学電車のその先に、君がいたことが、どれだけありがたいことだったか。
保健室から戻った私に、ノートを見せてくれる君に、どれだけ心が救われたことか。
あの日の、秋の夕暮れ。放課後、ひとり。三階の教室から見下ろした校庭。その高さを眺めていたところに、君が来た。
二人で、ロッカーの上に座って。慰め合うでもない、傷を見せ合うでもない。ただ、横にいた。
傾く日に、教室が赤く染まったそのさまを。窓から吹き込む風に揺らぐカーテンの軌道を。覚えている。
思春期の私達には、それが精一杯で。触れてはいけない傷跡の、その輪郭を、互いに旋回していた。
友よ。
君に出会えてよかったと、心から思うよ。
間違いだらけの、私たちの選択の中で。これだけは確かに、幸運だった。
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