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マグカップの茶渋

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マグカップについた茶渋のような、雑でリアルな人生。薄暗くて、じめっとしてて、でもなんだか悪くない。
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2019年12月の記事一覧

眼鏡実記(191230)

眼鏡実記(191230)

 2019年も終わりかけの年の瀬。今日、眼鏡を買い替えた。
 理由は、眼鏡のフレームが若干曲がったから。かけると、右側が少しだけ下がる。鏡の前に立つたびに感じていた歪みは、ひとりであれば見ないふりをするが、家族に指摘されてしまえば認めざるを得ない。レンズの曇った黒縁の丸い眼鏡は、一年半ほど前に買い替えたばかりだった。

 〇

 眼鏡ユーザーであれば経験があるだろうが、眼鏡を選ぶのは至極面倒である

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誰かが訪ねてくる場所のこと。

誰かが訪ねてくる場所のこと。

 重い身体を引きずりながら、パジャマのまま玄関をあける。裏手にある幼稚園のこどもたちはもう帰ったようで、晩秋の風が落ち葉を運んできていた。ガザリと音がして、玄関の取っ手をみる。そこには坂の下にあるコンビニの袋がぶら下げられていた。
 ポカリスエット、パウチのお粥、みかんの入った大きめのゼリー。それと、ビニール袋の下のほうに、一枚のメモ用紙。明らかに授業で配布されたものの端っこを破いたようなそれには

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