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オリーブの本当の価値を巡る旅⑥ / なぜ科学研究の土台に歴史研究が必要なのか(後編)

創業73年オリーブの専門家集団「日本オリーブ株式会社」の5代目 代表取締役社長を務めています、服部芳郎です。

前回記事で、現在一般的に使われる「科学的」という意味は
『現時点で観測してきた事例から導かれる、最も確からしい推論』
であるにすぎず、
『過去に、科学的に正しいとされたことが、全く真逆の扱いを受けるようになることは日常茶飯事である』
それが故に
『最新科学を手放しで信じることは、オカルトを信じているのと変わらない』
というお話をしました。

今回は、そのように「科学を盲信しない態度」の中で最も大切な
『歴史・文化に立脚する』
という思想について書いていきます。



(1) 科学とは何か? のおさらい

まず前回のおさらいで、現在一般的に使われる「科学的に正しい」「科学で証明されている」の意味は、
『現時点で観測してきた事例から導かれる、最も確からしい推論に則ると正しい』ということです。

つまり、『今までに積み上げてきた推論・試論の中で最も新しいもの』を「最新科学」と言っているに過ぎず、従って『過去に、科学的に正しいとされたことが、全く真逆の扱いを受けるようになることは日常茶飯事である』ことは前回記事で述べたとおりです。

※前回記事 ↓

そのため、
『最新科学を手放しで信じることは、オカルトを信じているのと変わらない』
と言えるのですが、この現代における「科学的」という言葉が、他と比べようもない精度で当てはまるものがあります。
それが『歴史・文化』なのです。


(2) 歴史・文化とは膨大なN数と試験期間の上に成る、最強の帰納的推論である

先ほどから述べている『観測してきた事例から推論を導く』手法は『帰納法』というアプローチです。

この『帰納法』は、N数(サンプルの標本数)が多ければ多いほど、試験期間が長ければ長いほど精度が高まります

例えば、〇〇という成分には摂取した人の血圧を下げる効果がある、と主張するとき、N数が10人よりも100人、100人よりも1,000人の方がより確からしく、同様に期間が1週間よりも1ヵ月、1ヵ月よりも1年の方がより主張の確からしさが高まるのは、直感的にも統計的にも正しいと思われるでしょう。

実際に、厳重な審査を経て承認される新薬の開発においては、
N数は10~20人程度の少人数グループからはじめて最終的に1,000人規模の患者を対象にした治験が承認申請の前段階で行われます。試験期間は3~7年、承認申請と審査まで合わせると更に1~2年が、順調に進んだ場合でもかかります。
※ 参考 : がんナビコラム 臨床試験と治験ってどんなもの?(国立がん研究センター中央病院臨床研究支援部門研究実施管理部臨床研究コーディネーター室長 中濱洋子氏, 医療ライター 福島安紀氏) / 日本製薬工業協会Q&A

これだけの労力と時間、そして金銭的な投資が行われていることが、巷に流布する根拠のないオカルト療法より、国の認めた治療法・治療薬が最適解になり得る根拠となっており、私もその考え方には賛成です。
しかし、ことN数と試験期間という観点で捉えたとき、文字通り桁違いの分野があります。
それこそが、『歴史・文化』
です。

歴史の洗礼を経て、文化として残ったもの、かたちを変えて宗教的儀式として残ったもの、これらがさらされた年月は10年20年はおろか、100年、1,000年のスパンです。
そしてその間にそれを体験してきた人数、N数は1,000人や10,000人という人数では表すことのできない、100万人、1,000万人、否更に数桁大きな人数です。

例えば、平安時代より前から行われてきた風習に「物忌(ものいみ)」というものがある。これは、穢れに触れたときや祭の前などに身を清め、家中の雨戸という雨戸を閉め人との接触を断つというもので、1000年以上ものべ何千万人もの人が行ってきた文化・風習である。
これが近年、例の新型感染症への対応策のひとつ「ステイホーム」にそっくりだと話題になっている。時にさらされ残ってきた風習、古代の人が受け継いできた文化というのは、最も科学的な本質を含んでいることがわかる一例である。

このことを考えてみたとき、最新の測定手法・理論から出発していないというだけで歴史・文化に残っているものごとを軽んじるのは誤った態度だということがはっきりとわかるのではないでしょうか。
否、そればかりではなく、歴史・文化そして風習や神話の中に残っているものごとで、近年再評価されているものは数多くあるのです。


(3) 歴史・文化が時を経て再評価された例

一例として、発酵食品が復権したことが挙げられます。

近年の研究で、腸は単に食物を消化吸収する器官ではなく、その中の細菌の働きで、全身の健康や、精神状態にまで重要な役割を担っている、いわば「第二の脳」であることが明らかにされてきました。

※腸が第二の脳とよばれていること、そして第三の脳とよばれる器官が存在することは以前の記事に書いています ↓

そのことから、その腸に良い生活「腸活」の実践として、ヨーグルトや納豆、甘酒やぬか漬け、お酢などあらゆる発酵食品が紙面やスーパーの棚を飾っています
かつ、工場で大量生産された発酵食品ではなく、自宅でぬか漬けやヨーグルトをつくることで良質な菌を取ろうという「菌活」なる言葉まで流行ってきました。

しかし、実はこれら発酵食品の重要性は歴史・文化・宗教の中のいたるところで既に示唆されているのです。

例えば、世界中で神と結びつく食べ物に発酵食品が多いことはそのあらわれです。
キリストはパンと葡萄酒を指し、自らの血と肉であるとしましたが、これはいずれも発酵食品です。
日本でも神様にお神酒を捧げますが、酒は発酵食品の最も古いものです。
インド神話ではアムリタという不死を得る飲み物(ソーマと同一視されますが)が登場しますが、これは神々と悪魔たちによる乳海攪拌によって醸造された発酵物です。

世界中で神に捧げられるものは、『これは我々人間にとって無くてはならないものだ』と古代の人が認めていたものである。例えば神道の神棚では米・酒(発酵食品)・塩・水が挙げられ、これらが日本人にとって無くてはならないものだということを否定する人は少ないだろう。ではオリーブは?というと、オリーブこそ神に近づくための特別な地位を与えられていたことがあらゆる神話からわかるのである。

このように、発酵食品が特別だ、ということは実は神話や風習を見ると自明であり、古代の人々からすると「発酵食品が必須だなんて、当たり前じゃないか?!」といいたくなるのではないでしょうか。


(4) 歴史・文化に立脚し、最新科学の裏付けを取ることによってのみ本質に迫ることができる

このように、歴史・文化そして風習や神話といった、時にさらされてきたものごとの中にこそ真に科学的といえる本質があります

しかし何も、宗教儀式に残っているからと言って、それをそのまま取り入れればいいというわけではありません。それでは最新科学を手放しで信じるのと同様、結局オカルトと変わらなくなってしまいます。
そこで最新の科学手法、理論の出番があります。

歴史・文化に立脚したうえで、最新の科学分析手法、研究理論によって裏付けをとっていくこと、これこそが本質に迫るために重要であり、私たちの研究開発における基本姿勢です。

『自然を尊び 科学を重んず』
創業者の遺した言葉であり我が社の社是である

(5) オリーブと歴史・宗教

ここまでで、
歴史・文化そして風習や神話といった、時にさらされてきたものごとの中にこそ真に科学的といえる本質がある』ということ
しかしそれを盲信するのではなく
『歴史・文化に立脚し、最新科学の裏付けを取ることによってのみ本質に迫ることが出来る』
という思想について書いてきました。

だからこそ我々は、国立大学をはじめとした産学官連携で最新の基礎研究を行いながら、一見ビジネスに関係のない、歴史・文化を探求する、いわば『総合研究』を軸にしているのです。

※ 当社における産学官連携基礎研究成果の一例 ↓

そして文中に、歴史・文化が示す重要なものとして発酵食品を例に挙げましたが、それに勝るとも劣らない別格の地位を歴史・文化・神話・宗教の中で与えられているものがあります。
それがオリーブです。

オリーブこそは、歴史・神話を紐解くと
『人類にとってかけがえの無い神からの恩寵』
であったことがはっきりとわかる
のです。
これに我々は研究で裏付け、更なる深堀りをし、世の中に再び広める憧れを持っています。

次回以降では、いよいよ歴史・神話の中のオリーブについて見ていきたいと思います。

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