アイアンマン主催WTC社、800億円でコンデナスト(VOGUE, GQ...)の親Advance Publications社へ売却
トライアスロンの「アイアンマン」シリーズを統括するWTC(World Triathlon Corp)社が、7億3000万ドル=800億円(@109.5円)で、アメリカのメディア企業アドバンス社(Advance Publications)が中国の不動産企業Wanda(大連万達)系Wanda Sports Groupから買収。
買収企業
買ったAdvance社は、VOGUE誌, GQ誌などお金持ち向けファッション雑誌を発行するコンデナスト社の親会社。アメリカで44番目に大きい非公開企業だそう(Forbes2014年)。非公開ファミリー企業なので、超絶セレブな一族が株価に左右されずに孫の代まで続くような長期目線で経営できるのは大きな強みだ。日本でいえば講談社の野間一族のようなものか。
いくつかの会社を経営するホールディング会社なので、スポーツイベント会社として単独でも稼ぎつつ、他にもシナジーを狙っているんだろう。
小会社で有名なのがコンデナスト。ネット芸人田端信太郎さんがビジネスマンとして日本のデジタル化を進めていた会社。
2021.3/17追記:コンデナスト・ジャパン、ラグジュアリービジネスのノウハウを活かした「コンデナスト富裕層総研」を設立
データ分析部門のメンバーも加えて、「長年にわたりラグジュアリー業界で蓄積した富裕層向け施策のノウハウを専門的に提供していく」とのこと。
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トライアスロンとは、世界的に、参加型スポーツの中でも、比較的高所得層が多め。GQ誌あたりの読者層とも重なる。買収には、2008年のProvidence Equity Partnersによる買収を主導した当時のメンバーも参加している。アイアンマンという参加型スポーツで儲けるためのカンどころもわかってるんだろう。
なお本件、ライオネル・サンダーズ選手などが関わっていた、アスリート主体での運営を目指していた団体も買収を目指していた。競争に負けたということだろう。
買収額推移
・1990年 トライアスリートの個人買収300万ドル(=WTC設立)
・2008年 投資会社Providence社8,500万ドル
・2015年 Wanda Sports Group(大連万達) 6億5000万ドル(+2.5億ドルの債務=計9億ドル)
・2020年Advance7億3000万ドル
みごとに上昇中。
2017年時点で私の本でも、GQ誌的なものとの相性ふくめて書いておいた。『覚醒せよ、わが身体。─トライアスリートのエスノグラフィー』ご参照 ↓
“Cycling is new Golf”〜自転車は新しいゴルフ、といった表現は2013年頃から見るようになっていて、これまでゴルフが中心であった高収入のビジネスエリートたちの趣味、さらには社交場としての役割を果たしている。去年12月にもそんなnoteを書いた ↓
そういえば、高級ファッション誌とトライアスロンとの関係でいえば、日本だと幻冬舎GOETHE誌が熱心で、トライアスロンチームも運用している。
中華企業WANDAは儲かったのか?
Wandaは買収時、株式6.5億ドルに加えて、債務2.5億ドルも引き受けているので、実質9億ドルをかけているので、売却額としては実質1億7000万ドルのマイナス。
ただ、もともと年間5000万ドルくらい利益をあげてた事業で、中国含め拡大によって直近で約1億2,400万ドルの利益を上げていたそう。前年比14%増=前々年は1億90万ドルか。4年間トータルでは儲けていそうだ。
今後の中国での関連大会の独占運営権も続行。
As part of the transaction, Wanda Sports Group will continue to operate the IRONMAN® and IRONMAN®70.3® triathlon series, Rock ‘n’ Roll Marathon Series® and Epic Series® of off-road mountain bike races in China under an exclusive license agreement.
WANDAの中国のホテルなど観光事業ともつながるし、ブランド認知にもなっただろうし、まあ、良い買い物だっただろう。ワールドマラソンメジャーズ(World Marathon Majors)のエイジグループワールドランキング ↓
へのスポンサーは続くようで、より競技人口の多いランニングに集中するということだろう。
中国でのマラソンなど参加型長距離スポーツの成長余地は巨大。その足がかりをこの4年間で固めることができたのなら、意味のある買収&売却だといえそうだ。
参加型スポーツでも儲けることはできる
日本では、参加型スポーツの運営・経営は厳しいことは、たびたび書いている通りだけど(例えば東京マラソンや宮古島トライアスロンは例外的 ↓)
世界市場の美味しいところをつかむことができれば、毎年100億円を超える利益をあげながら、800億円で売却できるようなビジネスも可能だといえる。
今年はさすがに厳しいとしても、この精神的な反動は1−2年後には大きく弾けることだろうし、ハワイ島のトライアスロンのような大自然参加型の長距離スポーツは、その受け皿としてさらに成長性はありうると思う。むしろ今は良質な受け皿が不足している、特に日本国内では。
ウイルスの去った世界で、春のツクシのごとく芽吹いてゆく未来図の1つが、見えてくるかもしれない。
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