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寄付の受け入れと拒否の倫理について|英国
今、「Santa Claus Is Comin' to Town」がかかっています。サビだけは歌詞も口ずさめそうな本家本元定番クリスマスソングですが、私、ずっと「Santa Claus Is Comin' two times」だと思ってたんです。
え!2回来てくれるの!?と。
んなわけないっす。1回っす。
ということで、先日の続きです。
ハリネズミ。
........ではなくて、寄付のジレンマについて。
先日見つけたとある記事の元ネタになる共同論文。サマリーを読んでみました。寄付の受け入れ判断について、です。
まず、大前提として、寄付受け入れの判断は、非営利組織にとって極めて複雑で、社会的、倫理的、実務的な要素、さらに時代や環境と、さまざまな要素が複雑に絡み合います。私はこの「倫理」と「時代や環境」が意外とクセモノだと感じており、人によって考え方の違いや幅にズレがあります。差分があるからこそ、複眼的に物事を見れるという意味にでは非常に効果的でもあり、同時に正解はどこ?の迷宮に入る可能性が生じます。おお、まるでインパクト評価のようだ!!w
迷宮における1つの視座になるかな~との期待を込めて、サマリーをさらにまとめてみます。なお今回はまとめにお友達のChatGPTさんのお手を借りました。
本論文は、英国チャリティ募金協会(Chartered Institute of Fundraising : CIoF)の既存のガイドラインを補足し、寄付受け入れ時の判断における基本原則、倫理的課題、そして実践への提言について、シンクタンクのRogareと共に共同で出したものだそうです。そもそも、ガイドラインの全体像もどんなものか興味津々♪
グレーゾーンへの対応
団体の社会的信頼の保全
倫理的判断力の向上
一貫性と公平性の確保
変化する社会環境への対応
ステークホルダーとの信頼関係の構築
上記のような理由から、単なるポリシーの適用に留まらず、現場での協働的な調査や議論を通じて、適切で倫理的な寄付判断を行う仕組みが必要なのだそう。
1. はじめに
非営利組織が寄付を受け入れるか拒否するかの判断は、単なる財務的な問題を超えて、団体の目的達成や社会的信頼、そして倫理的な責任に直結する重要なテーマです。
本論文では、英国チャリティ募金協会(Chartered Institute of Fundraising : CIoF)の既存のガイドラインを補足し、寄付受け入れ時の判断における基本原則、倫理的課題、そして実践への提言について考察します。ガイドラインが提供する指針は有用ですが、それだけでは対応しきれない「グレーゾーン」が存在するため、柔軟かつ倫理的な判断が求められます。
2. CIoFのガイドライン|寄付受け入れ/拒否の基本原則
まず、CIoFのガイドラインは、寄付判断において次のような基本的な枠組みがあります。
寄付は基本的に受け入れるべきである
寄付者の意図や背景がどのようなものであっても、寄付によって得られる資金は、団体の目的達成に活用されるべきだという立場です。
寄付を拒否するのは例外的な場合に限られる
拒否が正当化されるのは、団体の目的や価値観と重大に衝突する場合、または寄付の受け入れが団体や関係者に深刻な損害をもたらす場合です。
たとえば、団体の目的が健康促進であるにもかかわらず、健康を損なうような製品を製造する企業から寄付を受け入れることは、その目的に矛盾する行為とみなされます。また、寄付を受け入れることで社会的信頼が損なわれる場合も判断のポイントになります。
3. 寄付拒否の主な理由
寄付を拒否する理由は、大きく次の2つに分類されます。
3.1 団体の目的や価値観との対立があるか
寄付が団体の活動目的や倫理的価値観と矛盾する場合、拒否することが検討されます。たとえば、がん治療を支援する団体がタバコ会社から寄付を受けることは、明確にその目的と矛盾します。これは、受け入れること自体が団体の信頼性を損なう可能性があるためです。
3.2 受け入れることによるリスクはあるか
寄付を受け入れることで生じる可能性のあるリスク
他の寄付者や支援者の離脱
ボランティアやスタッフの士気低下や離職
寄付者による不適切な行動が引き起こす職場環境の悪化
団体の社会的信頼の損失
これらのリスクは、寄付による利益を上回る場合に拒否の判断が適切とされます。
4. 倫理的判断の課題
寄付を拒否する際の判断基準には、以下のような課題があります。
4.1 主観性と一貫性の難しさ
寄付者の行動や価値観が団体の方針と一致しない場合、拒否を検討する必要があります。しかし、寄付者の「価値観」や「道徳的適性」の評価には主観が含まれるため、判断が一貫しないリスクがあります。一貫性のない判断は、団体に対する批判や信頼低下を招く可能性があります。
4.2 結果主義的アプローチの有用性
「結果主義的アプローチ(コンシクエンシャリズム)」は、寄付を受け入れることによる「利益」と拒否による「損害」を比較し、合理的に判断を下す方法です。このアプローチに基づくと、主観的な倫理観や価値観に頼ることなく、より実践的かつ透明性のある結論が得られます。
5. 結論
寄付受け入れに関する判断は、団体の目的や価値観、リスクと利益のバランスを慎重に評価する必要があります。最終的な決定は、CIoFのガイドラインや客観的な証拠に基づき、一貫性を持つべきです。また、結果主義的アプローチを活用することで、判断の合理性を高めることができます。
寄付判断における透明性と一貫性を確保するためには、ガイドラインの継続的な見直しやスタッフへの倫理教育も重要です。これにより、団体は社会的信頼を守りつつ、目的達成のために最善の選択ができるようになるでしょう。
まとめはここまで。
さてさて、かつてグローバル組織のファンドレイジングしていたころ、「リスクが寄付による利益を上回る場合、NGの判断が適切。」というそのままズバリのアドバイスをもらったことがあるのですが、言いたいことは分かるものの、正直なところ、細かいニュアンスが「?」でした。その当時の私は、結局、寄付金額めっちゃ高い、もしくは継続性により、活動のサステナビリティの保証が上がればいいってこと?ま~~~、ゲンキンだわ~~~。おほほほほ~。なんて思ってました。こういう理解の箱しか、私は持っていなかったのだと思います。
要するに、受け入れるか否かの検討が必要なケースにおいて、その寄付が、想定されるリスクを上回るだけの寄付金額なのか?といわれ、そんな数字だせるかい!その計算のための公式を提示してくれぇい!と思ってたわけです。
そう、問題はその計算のための公式が、曖昧であること。
これは因数分解のような明確な公式ではなく、最適解風なフォーマットができると良いんだろうな。それが再現性のある、かつ他者も理解できる図や文字化できれば.…。
うん、いつか。
以下は、備忘録まで。
ケース2が過去に経験した事例に結構使えそうなので。
結果主義的アプローチとは
結果主義的アプローチ(Consequentialism)は、行動の「結果」に基づいて、その行動が倫理的に正しいかを判断する考え方。だそう。行動そのものではなく、「利益」と「損害」のバランスを重視する考え方。
寄付判断における結果主義的アプローチのプロセス:
寄付を受け入れた場合の「利益」はなにか
団体の活動資金が増える。
団体が目指す使命や目標の達成が加速する。
支援を受けるべき人々(受益者)がより大きな恩恵を受けられる。
寄付を受け入れた場合の「損害」はなにか
寄付者の背景が問題視され、団体の評判が損なわれる。
他の寄付者やボランティアが離れる可能性。
団体内部で不満やトラブルが生じる(例:職員や支援者が倫理的に受け入れられない)。
「利益」と「損害」のバランス評価
受け入れによる利益が損害を上回る場合: 寄付を受け入れるべき。
受け入れによる損害が利益を上回る場合: 寄付を拒否するべき。
このアプローチでは、倫理的な正しさは「結果の総合的な良し悪し」で判断するそう。
ケース 1: タバコ会社からの寄付
利益: 多額の寄付金により団体の活動が拡大し多くの人々を支援できる。
損害: タバコ会社との関与が団体の健康推進活動の使命と矛盾し、評判が悪化する。
結果的な判断: 損害が大きい場合は拒否する。
ケース 2: 問題行動歴のある個人からの寄付
利益: 個人の寄付により重要なプロジェクトが実現する。
損害: 個人の過去の行動が報道され、団体の信頼が損なわれるリスク。
結果的な判断: 損害が軽微である、または公に影響しない場合は受け入れる。
リスク(の可能性)が寄付による利益を上回る場合は拒否すべし。