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寄付のジレンマ|エシカルファンドレイジング

ジレンマ、といえばハリネズミを連想するのは、私が心理学系ゼミ出身だから??(何十年前の話だ…)
さて、いつの頃からか個人的に身近になった「エシカルファンドレイジング」。
ファンドレイジングの行動基準(日本ファンドレイジング協会)にもある通り、ファンドレイジングをするにあたって倫理的な行動をとるのは大原則。

先日オンライン参加した英国Resource Allianceの「Reflect, Reframe, Redefine」では、Contributor Centred Storytellingという手法で作ったファンドレイジングのためのツール作成についての報告でした。ストーリーテリング、好物でして。
こちらは、呼んで名のごとし、受益者が中心になってファンドレイジングコミュニケーションツールをつくるもの。人道セクターのスタッフから被災した人々に、物語を語る力にシフトする方法が提供されるように設計されたものらしい。自身の過去や今を自ら語り、かつ第三者に引き出してもらうことで、自身の心の傷も含めたメンタル回復&自立心向上がもたらされるもの、と勝手に想像しています。また、結果的に、受益者自ら語ることで、より寄付者の感情を刺激するものになるのか、と。
さて、この会の質疑応答で非常に興味深かったのが、受益者を前面にだすことで倫理性を担保できているかという質問。とっても活発にやりとりがなされてて、さすがこのあたりに敏感だなという印象でした。
UN機関やINGOでは、被写体となる方々からの許可の有無や、使用目的ごとの画像・動画のグループ化など、かなりルール化されている組織もあり、非常に興味深いテーマです。

さて、このエシカルファンドレイジングのなかで、個人的に課題なのは、寄付のジレンマともいわれる、寄付を断るか否かの判断を求められるケースの基準。これはよく相談もされますが、何をもって拒否しなければいけないのか、明確にといっても都度都度状況は変わるので、ある一定の方針をもっておく必要があります。

そこで、こんな記事を発見しました。
Consider potential harm instead of values when turning down donations, charities urged(06 Nov 2024)

寄付を断る際には、価値観ではなく潜在的な害を考慮すべき

こちらは、ファンドレイジングに関するシンクタンクであるRogareと英国チャリティ募金協会(CIoF)との共同論文についての記事です。

この論文では、ファンドレイザーが寄付の受け入れ決定を行う上で、寄付者との「価値観の一致」を優先することは、最も一貫性があり倫理的な方法ではない可能性がある、と言及されているそうです。価値観が異なるからという理由のみを優先して寄付を断るべきではない、ということですね。

特定の寄付を受け入れることによって非営利組織に生じる潜在的な悪影響に焦点を当てる方が、寄付者の価値観を評価するよりも信頼性の高い倫理的な枠組みを提供できる可能性があるとのこと。
研究の目的は、ファンドレイザーが寄付の受け入れ、または拒否について、より堅固で証拠に基づくアプローチを身につけ、この分野における一貫性と倫理的な明確性を高めることにあるそう。

本記事では、Rogareのディレクター、およびCIoFの政策・コミュニケーション担当ディレクターの言葉が紹介されていますが、印象的なのは「寄付を辞退するかどうかを決定する際に生じる課題に対する唯一の解決策はなく、各団体は事業の目的を達成できる独自の方法を開発する必要があります。」との言及。

いくつかの事例に関わったことがある身として、一律同じ条件の事案が発生するわけでないため、毎回大変。指針があっても、誰に相談すべきか、の時点で割と頭を抱えます。基本的には事務局・理事会・士業がスタンダードですが、これが各人の倫理観に左右されることがあるため、結構意見がゆれる印象があります。結果組織の保守革新度合いの空気、また組織の成長フェーズや資金ニーズによって、どちらの結果に転ぶか、が決まってくる。

いずれにせよ本記事だけだと、本論文の詳細が分からないため探してみたところ.…。ああ、またきた沼。

次回サマリー中心に書きまとめようと思います。最後に、大事なことだからもう一度。

寄付が引き起こす倫理的ジレンマに対する「唯一の解決策はない」。のです。

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