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【通販受付開始】文学フリマ東京39の新刊

12月1日開催「文学フリマ東京39」合わせの新刊のおしながきです。

【11/16追記】
本が2冊とも自宅に納品されました! とても綺麗に印刷していただけました。
店番をお願いできる知人が見つからないので、自家通販で先行頒布いたします。

【11/17追記】
新刊セットの匿名通販も登録いたしました。BOOTHで購入できます。

下記は従来の自家通販です。

ご住所の記載が不安な方は郵便局留めもご利用いただけますので、お気軽にご利用くださいませ。
※リンク先はフォームメーラーというページに飛びます。


【 ブース番号 】 な-10 ※欠席予定
【 サークル名 】 Dove.
【 サークル主 】 鳩谷みお
【 ジャンル等 】 短編・掌編

発行物一覧

①「回帰、そして黎明」短編集/文庫サイズ/188p/1000円
②「隣人を食む」純文+ゲスト/文庫サイズ/20p/100円
★「Dove.しおり」ノベルティ/名刺サイズ/青色紙に銀箔押/無料

※ページ数は表紙を含めた数字です。


①「回帰、そして黎明」短編集

文庫サイズ/188p/1000円

・料理が趣味の聡は、30歳の誕生日に冷蔵庫を新調した。しかしある日突然、冷蔵庫から男性の声が聞こえるように。「ちょっと、アタシに触らないでちょうだい!」――「冷たい同居人」(いちおう男女恋愛)
・我が家には二羽のニワトリがいる。名前はつくねとささみという。病気で他界した俺は縁側に座って、バアさんと鶏たちをずっと見守っている。――「躍動するチキン」(ヒューマンドラマ……?)
・京都に住む祐介はインスタに傾倒する大学生。ある夏休み、父の仕事の都合で大噴火の予兆を抱える鹿児島・桜島のふもとへと行くことに。――「孵る炎」(多分ヒューマンドラマ) など

「喪失、そして再生」というテーマを根底に据えた、計8編の短編と掌編を収録した短編集になります。
シュールコメディだったり、ほのぼのしていたり、青春していたりと様々なお話が楽しめます。

※表紙はてんぱる様の配布素材を使用させていただいております。


②「隣人を食む」純文+ゲスト

文庫サイズ/20p/100円

あらすじをまとめるのが苦手なので、3ページ分まるっと掲載します。

 ===本文抜粋===

 突然、食べ物の味が分からなくなった。
 朝になって鉛のような身体を引っ張り起こし、マーガリンを塗ったトーストを頬張ったところで違和感を覚えた。焼けた表面に歯を立てたときの薄い膜を割るような食感は分かる。けれども、マーガリンのてろりとした油気や、安い食パンのわずかに残ったまろやかな牛乳の甘みが感じ取れなかった。
 味覚障害。その単語が頭に浮かんで、真っ先に疑ったのはコロナだった。けれども熱はない様子だし、頭も喉も身体の節々も痛くない。昔インフルエンザにかかったとき高熱の後遺症で味覚がおかしくなったことはあったけれど、舌だけに異状がでるのは初めてだ。
 気にはなるけれど、味覚がおかしいだけなら仕事に支障はないだろう。深く考えないようにして食パンを麦茶で流し込み、手早く身支度をした。そして玄関のドアを開けて、しっかりと鍵を閉めた。
 十七分、バスに揺られて出社した。会社には見慣れた光景があって、私のデスクにはドッジファイルに挟まれた書類が高く積まれていた。窓を開け換気をして、私はいつもどおり始業の一時間前から仕事に取りかかる。私以外に誰もいないので電気はつけない。電気の無駄遣いだと課長に怒鳴られるからだ。

 昼休み、私は外に出た。コンビニでおにぎりを二つ買って、近所にある小さな公園の遊歩道沿いにあるベンチに座る。そこは鳩の憩いの場になっていて、警戒心のない彼らは私の足元に寄ってきた。くちばしがこちらを向いていて目は左右についているので、こちらを見上げているわけではない。彼らはいったいどこを見ているのだろう。
 目線を上げると、黄色い塗装の剥がれたブランコのそばに鳩が一羽、群れから離れたところに佇んでいた。
 あの鳩は先ほど、メスに必死の求愛をしてフラれたところだった。見初めた相手が飛び去ってしまった現実を受け入れられていないのか、虚空を見つめたまま固まっている。膨らませていた鳩胸の名残で、不ぞろいの羽毛が風になびいていた。
 小柄ではないが立派でもない、青みがかったグレーのありふれた鳩だった。道端で仲間と群れてせわしなく地面をつついているような、たまに子どもに追いかけられ慌てて電線の上に避難するような、そんな存在。目まぐるしく変化する世界に適応し、そつなく生き続ける隣人だ。見た目は他の個体と変わらないのに、どうして彼だけ離れたところにいるのだろう。
 彼は相変わらず、羽毛を風にそよがせながら佇んでいる。見開かれた目からは今にも涙が流れそうだ。
 勝手に哀愁を感じていると、落ち葉を踏みしめる音がした。
「お疲れ、みりんちゃん。こんなところで独りランチかい、寂しいね」
 そんな言葉を発しながら背の高い男性がこちらに歩いてきた。同じ課内の、隣の島の高橋係長だ。海外のすごい大学を出ているためか若くして役職を得た人で、他の社員からは敬遠されている、ような気がする。
「お疲れ様です。確かに一人でご飯を食べていますが、特に寂しくはないです。それと私の名前は『みすず』です」
 社名の下に『三鈴友子』と書かれた社員証を掲げてみせるが係長はこちらを見ることなく、ベンチに置いていたステンレスボトルを私のほうに押しやって隣に座った。
「メジャーな調味料なのに『さしすせそ』に入れないみりん。なんとも皮肉じゃないか。体よく使われて消耗される君をよく表していると思うけどね」
「私、体よく使われているんですか」
「気づいていなかったのか」
 係長は目を丸くした。
「まあ気づいていたら無能な課長から叱られないだろうし、怠惰な社員の仕事も押しつけられないだろうし、毎日残業もさせられないだろうな」

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ゲストに友人の倉川かなでさんをお迎えしています!
3ページの掌編を寄稿してくださっています。

※表紙はてんぱる様の配布素材を使用させていただいております。


★「Dove.しおり」ノベルティ

名刺サイズ/青色紙に銀箔押/本の購入者様に無料でお渡しします

手作業でしおりひもをつけております。


どうぞお気軽に手に取っていただけますと幸いです!


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