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2021/05/21 自宅で居酒屋に足りなかった音

5月17日からロンドンで制限が大幅に緩和され、パブやレストラン、カフェの屋内営業も再開された。当地では、ワクチン接種も進み、少しずつ「日常」へ戻っているようだ。

ひるがえって日本はというと、夜8時をすぎると、一斉に飲食店の明かりが落ちる繁華街を歩いていると、本当にさみしくなってくる。

先日、「自宅で居酒屋」をやってみた。フライドポテトに名古屋手羽先(間違えて買ったため、手羽元になってしまった)、チーズを載せたクラッカー、やみつきキャベツをノンアルコールビールをテーブルに広げ、さあ、乾杯!

…何か違う。何かが足りない。そうか、音が足りないのか。

YouTubeで「居酒屋」「BGM」で検索してみた。最初は、昭和歌謡のヒットメドレー。ちあきなおみ「喝采」、河島英五「酒と泪と男と女」…。雰囲気は出てきたけれど、もう一つ、決定的なものが足りない。

そのうち、BGMを背景に、「らっしゃーい!」という掛け声や、注文する声、カチャカチャと器が鳴る音、客の談笑などが入った音源を見つけ、流してみた。とたんに、自宅が居酒屋モードに。

そうか。居酒屋やカフェにあって、自宅になかったのは、ノイズだったのか。見知らぬ者同士がほんのひととき交錯して、シェアする空間に流れるノイズ。騒音を打ち消すノイズキャンセリング機能のついたイヤホンがよく売れる当世だけど、実は雑然とした音が、安らぎを与えてくれていたのだ。それは思わぬ発見だった。

緊急事態宣言下、雑談、雑音といった「雑」を奪われている気がしてならない。目的を持たない、一見無駄なものの中に、意外性を生む豊かさがあったのではないだろうか。


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