「野菜は作るより、買った方が安いのか?」新規就農への記録・その34
以前、むそう塾というところで、
野菜作りをしていた時のお話です。
その時は、野菜を作ってみたい!という思いが最初にあって、
収穫した野菜を美味しい!と家族みんなで食べていました。
でも、ある日、
メンバーの方がぽつり。
「でも、スーパーで100円で売ってるのみると、モチベーション下がるよね。」
「そうそう、家族にも、買った方が安いよとか言われちゃうんだよな。」
その頃スーパーでは、大体野菜は100円以内、税抜き表示で98円とかで売られていました。
チラシでいう「目玉商品」だったりすると、もっと安かったり。
産直の店だと、さらに安かったりする。
自分たちがこうして作ってる野菜って、
いったい、いくらくらいのお金がかかっているのだろう?
むそう塾は、基本無農薬無化学肥料が原則でしたから、その類いの費用はかからない。
でも、苗代や農地の利用料はかかる。
あと、農薬を使わない分、
除草や虫の駆除など、
お金はかからないけど、
手間暇かける必要があります。
「だから、買った方が早いんだよな」
ほんとは、もちろん自分で作った方がいいに決まっているんですけど、
なんか釈然としない。
このもやもやが、
有機農業が仕事として、職業として成立しない要因ではないのかな、とも思います。
自分で作るより、
圧倒的にスーパーの野菜の方が安い。
ただ、その98円のキャベツを作った農家の人は、儲かっているのだろうか?
何か「工夫」をしないと、
98円じゃ売れないよね…と、
一度でも自分で野菜を作った人は感じると思うわけです。
どこでどんな工夫をするか。
土作りは、時間がかかるから、化学肥料を使う、と。
で、害虫対策として、
人を割けないから、薬を撒く。
かかった肥料や農薬の経費を、
大量生産する事で相殺する。
ただ、今度は、大規模に広げると、
機械化による燃料やメンテナンスの費用がかかるし、
通年栽培ともなれば、ビニールハウスや暖房費の燃料費が増えていく…
もはや、何が要因か、
あまりにもいろんな要素が絡み合っていて、私にはわかりません。
そもそもが作った人が赤字分を被っているだけなのかもしれない。
ただ言えるのは、
その98円のキャベツは、
誰かが作ってくれたということ。
その過程に思いを馳せたら、
安売りの目玉商品にするのは、
やはり違うんじゃない?
と思うのです。
農業は、補助金があるのでは?という考え方があるかもしれないです。
ただ、個人の農家では使える補助金はほとんどないし、
(あ、あるのかもしれないけど、今の自分のような新規就農者、それも50代以上には、ない…はず。)
法人さんとかだと、
その補助金を受けるために、
また無理に背伸びをしなきゃならなかったり…。
まぁ、今でこそキャベツが1000円とか言われていて、
今なら自分で作っても、作りがいがある気もします。
ただ、本来家庭菜園は、自分の心と家計が満たされるところが目的だと思うので、比べることに大きな意味はありません。
ただ、これからの農業を考えていく上で、自分で野菜を作る経験をすることは、価値観を変えるという点で大きな意味を持つはずです。
海外旅行をすると、客観的に日本のことが考えられるようになる、とよく言われます。それは、いろんな「世界」があることに気付く、ということなのでしょう。農業も、それと似たようなことが言える気がします。
実際に作ってみて気づくこと。
特に自分たちの生きるための食べ物のこと。
なぜだろう?
そういった釈然としないことのひとつひとつについて、
もっと深く考えていきたい。
4月からは、「食料供給困難事態対策法」という法律が施行されます。
去年の6月に国会でひっそりと成立しているのですが、
よくよく調べると、
ちょっと怖い法律です。
生産者への罰則もあります。
これ、実際に運用されたら、
もう、100円だ、1000円だとかいっていられなくなります。
農家も自分の意思で作物を作ることはできません。
消費者も、好きな食べ物を買うことができなくなる…
…まぁ、そういうことを想定した法律なので、当然と言えば当然なんですけど、これを運用する前に、
いまの日本の農業をどうするかを、
政治家の方々にはじっくり考えていただきたいです。
まぁ、それだけ今が、
自由で平和な時期だということなのでしょう。
そのことに感謝しつつ、
今は、「やっぱり作った方が安いよね〜。」といえる世の中がくると良いなぁ〜と、思っています。