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秋の夜長
『ののはな通信』(三浦しをん)読了。
2人の女性の物語はどんな終着なんだろう、くらいの気持ちで読みはじめた。こんなにも揺さぶられて随所随所涙がこみあげてくるとは。
何にだろう。
2人の関係性かな。
物語は手紙でのやり取りで進んでいく。誰かに宛てた手紙って魅力的な気がする。
そんな2人の関係性に名前をつけることはできないなとずっと思いながら読んでた。そういう関係って世の中にたくさんあると思う。てか、それでいいんだと思う。名前があればカテゴリーの中におさまることによって安心感とかだからこう、というような都合のいいときの言い訳がまかり通るからかな。
友達、恋人、運命…
2人は惹かれあってる。と、同時に違うからこそ惹かれるけど、歯がゆいというか、違うのが嫌だというか…一緒にはなれない。本文では『溶けあえず一体になれなかった』と。本当にその表現がぴったりというか。しっくりきた。
2人の物理的な距離が、思い出、いや、お互いを求めあったその時間、空間をものすごい強固なものにするんだろうな、と文章のやりとりが進めば進むほど強く出てたと思う。
そういう2人に強烈に惹かれていくし、自分を重ねてしまう。
そんな人がいれば、あの人ととそんな風だったら、あの時がそうだったかも、と。
手紙(メール)のやり取りは2人の関係性を描いて物語が進んでいくんだけど、物語はそれだけではなく、生きていくことにおいてどんなことを中心に、より気持ちを傾かせていくのか、というのも書かれている。
仕事や日常の何か、誰かのために生きること。
そこには必ず人が関係している。
自分の中の善を大切にしたくても、行動に移せる人とそうでない人がいる。
それは1人でそこに立ち向かうわけではなく、繋がっている誰か何かがあるからこそ、一歩が踏み出せる、んじゃないかと思う。
強く自分も相手(何か)も信じられるから。
すごく素敵だった。けど、到底自分には真似できない。でも現実世界でもそうやって動いている人はいる。
私は目の前にあるものに捕らわれてるんだな、とすごくすごく思った。
物語には終わりがある。最後どうなるか、がもちろん気になるし、こうなったらいいな、意外だけど納得!とか。
結果こうだったからいい、とか悪いではなく、
素敵な2人の想いを見せてもらえました。
ありがとうございました。