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【歌詞和訳】Bon Jovi「These Days」〜2024年を振り返りながら〜
冒頭部分が冗長になってしまいました。歌詞和訳が気になる方は目次でジャンプしてください(↓)
2024年を振り返る
2024年はどんな年だったでしょうか。
近年、AIの進化などデジタルの技術革新は凄まじいものですが、いくらヴァーチャル・ワールドが開かれても、人間が生きる限り、血と汗でできた生身の世界はいつまでもそこにあります。
今年のノーベル平和賞は日本被団協が受賞しました。世界では戦争が終結に向かわぬ中、潜在的な閉塞感や不安感が広く根を張っている気がしてなりません。2022年に始まったウクライナでの戦争や2023年から激化したパレスチナでのジェノサイドは全くやまないまま2024年が終わろうとしています。
現代のクリスマスは反戦キャンペーンの記念日でもありますが、ジョン・レノンとオノ・ヨーコの願いとは裏腹に、人類は2024年も "War Is NOT Over" のままクリスマスを迎えました。
世界に目を向けるまでもなく、日本にとっても閉塞感や不安感はすぐそばにあります。能登の震災から始まった1年、気候変動の影響も目立ちました。夏から秋にかけて記録的高温が続き、富士山の初冠雪は観測開始から最も遅い11月7日となりました。気候変動は水や居住地といった生活の条件にクリティカルな影響を与えます。技術革新で人間を火星や仮想空間に「移住」させる計画はもはや神話でしょう。人間が危機から逃れるより前に危機がやってくることはもはや明らかです。そして、そこには例えば「誰から逃げるか」という政治性が必ず伴います。
2024年は政治の領域で非常にリマーカブルな年でした。日本・アメリカはもちろん、イギリスや台湾、インドネシア、メキシコなど世界中で選挙が行われた選挙イヤー。各国の政治がどう変化したのか、ないし変化していないのかは評価が分かれるところですが、危機の時代で人々が向き合うべき課題は「負担配分」。右肩上がりの時代には討議や政治的妥協によって比較的安定したデモクラシーを実現できますが、先行きの見えない今日この頃は、政治が他責化や自己防衛の言説に蝕まれることも少なくありません。
人類は、「血と汗でできた生身の世界」で、現実と向き合いひたむきに生きていくしかないでしょう。
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斜陽、雑踏、不安の中で。
傾きゆく社会に流されるままに生きてみても、時の流れは速く、何も長く続きやしません。栄枯盛衰はこの世の定め。一世を風靡した大物も果てには斜陽の人となります。雑踏の中を歩いて目にした群衆は、自分自身をすりつぶすように毎日を生きています。何にしがみついて生きていけばいいのか。潜在的な不安感や閉塞感はなかなか拭えるものではありません。
そんな世の中を歌いあげた曲に、Bon Joviの「These Days」(1996)があります。
アドレナリンを爆発させたようなヘア・メタルでキャリアをスタートさせたアメリカのロックバンド "Bon Jovi"(ボン・ジョヴィ)ですが、歳を重ねるにつれ内省的な曲を作るようになります。「These Days」はそうした内省的なバラードの代表作です。後年に「It's My Life」に昇華されることになるこの時期のサウンドと歌詞は、ボン・ジョヴィのキャリアの中でも唯一無二のものでしょう(ボン・ジョヴィの音楽的変遷と「These Days」の評価について詳細は以下参照)。
今回はこの曲を内省的な語りに注意しながら和訳してみました。
ぜひMVを再生しながらお読み下さい。
【歌詞和訳】Bon Jovi「These Days」
I was walking around, just a face in the crowd
あちこち歩き回っていた、群衆にまみれて
Trying to keep myself out of the rain
雨に濡れぬようにしながら
Saw a vagabond king wear a styrofoam crown
発泡スチロールの冠を被った放浪中の王様を見たんだ
Wondered if I might end up the same
俺も同じように終わるんじゃないかって思った
There's a man out on the corner
角っこのところに男がいて
Singing old songs about change
変革についての古い歌を歌っている
Everybody got their cross to bare these days
誰しも自分なりの十字架を背負って生きる、この頃だ
She came looking for some shelter
彼女は居場所を探し求めてきた
With a suitcase full of dreams
スーツケースいっぱいに夢を詰め込んで
To a motel room on the boulevard
大通りに面したモーテルの部屋へ
I guess she's trying to be James Dean
たぶん彼女はジェームズ・ディーンになろうとしているんだろう
She's seen all the disciples
彼女はあらゆる弟子たちを見てきた
And all the wannabes
あらゆる「卵」たちを見てきた
No one wants to be themselves these days
この頃、誰も自分自身らしくあろうとはしない
Still there's nothing to hold on to but these days
やはりしがみついていられるものなんてないんだ、この頃は
These days, the stars seem out of reach
この頃、星に手が届く気なんてしない
These days, there ain't a ladder on the streets
この頃、道路にはハシゴさえないんだ
These days are fast, nothing lasts in this graceless age
日々はあまりに早く、栄光なき時代に何も長くは続かない
There ain't nobody left but us these days
俺ら以外に誰も残っていないんだ、この頃は
Jimmy Shoes, he busted both his legs
ジミー・シューズ、彼は両足を骨折した
Trying to learn to fly
飛び方を学ぼうとして
From a second story window
2階の窓から
He just jumped and closed his eyes
ただ飛んで目を閉じたんだ
His momma said he was crazy
彼はイカれたと母親は言う
He said, "Momma, i've got to try
彼は答えた、「母さん、俺はやるしかなかった。
Don't you know that all my heroes died?
俺のヒーローはみんな死んだんだよ?
And I guess I'd rather die than f-f-fade away", yeah
うっすら消えるくらいならいっそ死のうと思った」
These days, the stars seem out of reach
この頃、星に手が届く気なんてしない
These days, there ain't a ladder on the streets, oh no no
この頃、道路にはハシゴさえないんだ
These days are fast, nothing lasts in this graceless age
日々はあまりに早く、栄光なき時代に何も長くは続かない
Even innocence has caught the midnight train
もはや純真さも深夜の電車でどこかへ行ってしまった
There ain't nobody left but us these days
俺ら以外に誰も残っていないんだ、この頃は
I know Rome's still burning
ローマがなお燃えているのはわかっている
Though the times have changed
時代は移り変わるけれど
This world keeps turning round and round and round and round these days
この世界は廻り廻り廻り廻り続けているんだ、この頃も
These days, the stars seem out of reach
この頃、星に手が届く気なんてしない
These days, there ain't a ladder on the streets, oh no no
この頃、道路にはハシゴさえないんだ
These days are fast, nothing lasts in this graceless age
日々はあまりに早く、栄光なき時代に何も長くは続かない
Even innocence has caught the midnight train
もはや純真さも深夜の電車でどこかへ行ってしまった
These days, the stars seem out of reach
この頃、星に手が届く気なんてしない
These days, there ain't a ladder on the streets, oh no no
この頃、道路にはハシゴさえないんだ
These days are fast, nothing lasts
日々はあまりに早く、何も長くは続かない
there ain't no time to waste
無駄にする時間なんてないんだ
There ain't nobody left to take the blame
こいつのせいだって奴もどこにもいやしない
Oh no no no, ain't nobody left but us these days
俺ら以外に誰も残っていないんだ、この頃は
Ain't nobody left but us these days
俺ら以外に誰も残っていないんだ、この頃は
【歌詞考察】
なりたいものになろうとする若者はいつの時代にもいます。若くして世を去った伝説的俳優ジェームズ・ディーンに憧れる女の子("she's trying to be James Dean")もその1人。夢をスーツケースいっぱいに詰めて街にやってきました。
彼女は、夢を抱えて弟子入りした若者たち("disciples")や夢に憧れる若者たち("wannabes")を間近に見てきました。若者たちは、その世界の「卵」です。でも、誰も自分らしくあろうとしていない。しかも、もはやこの世界にしがみついていられるような、任せておけば上手くいくといったようなものはない("there's nothing to hold on to")のです。
世界全体が1つの船だとしたら、その船が沈んでいくかのような、そんな世界が想起されます。
2番で登場する少年は「うっすら消えるくらいならいっそ死のうと」します。上に上がるための梯子さえない("there ain't a ladder on the streets")世の中で、時はあまりに速く進みます("These days are fast")。
"I know Rome's still burning" と切り出してから、曲調は盛り上がりを見せます。ローマ帝国の皇帝ネロはローマが燃えているのにフィドルを弾き続けたという逸話があり、英語の諺("Fiddle while Rome burns")になっています。ローマが燃えるというのは当時のローマ帝国にとっては一大事。帝国の存亡にさえ関わりかねない最悪の事態です。ローマが燃えているのはわかっている、というのは、自分たちの世界が住んでいるシステムの中心が、もう消えかけようとしている、消えて無くなってしまいそうなのはわかっている、そんな状況と考えられます。やはり船は沈みかけているわけです。ところが、自分たちの生きている世の中が炎に包まれようにも、船が沈みそうにも、世界はひたすら廻り続けます("This world keeps turning round")。
この頃の世界にはもはや、輝かしい夢も幻想もない。全て消えてしまって、もはや残されたのは自分たちだけになります。
曲は最後のパートで再度世界の終末を叫びながらも、それは誰のせいでもなく("There ain't nobody left to take the blame")、そして、最後は自分たちしかいない("Ain't nobody left but us these days")と繰り返します。
自分たちしかいないのです。夢がなくても、世の中が傾いていても、今ここに自分たちが残されている。それは紛れもない事実です。
無駄にする時間なんてない("there ain't no time to waste")。自分たちこそが今踏み出していくしかない、現実を引き受けて前に進むしか、道はないんだ。
歌詞はネガティブですが、力強いヴォーカルで締められるこの曲には、そんな率直で素直な決意を感じ取れるような気がします。
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Audioヴァージョンには、MVではカットされているピアノとギターのイントロがついています。実に哀愁漂うメロディで、この曲にピッタリです。
ライブヴァージョンも力強さが味わえて最高です。
年末を迎えて「2024年を振り返る」という類の記事やニュースが増えましたが、多くに「激動の2024」というような見出しがついていました。何も今年だけでなく、近年はずっと「激動」という言葉がもはや枕詞のようについている気がします。
栄光なき時代に長続きするものはなかなかありません。難しい世の中ですが、でも残された自分たちは現実を受け入れて前に進むしかないのかもしれません。
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2025年へのひたむきな決意を込めて.
2024/12/27