no title【#絵から小説】
チュン、チュン
朝日と鳥の鳴き声で、はっと目が覚めた。
そこにはもう、あの人はいなかった。
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「私、きっと10年後もあなたのそばにいると思う」
小高い丘の上。沈む夕日を遠くに見やって、その人はそう言ったのだ。
鈴のような声だった。
「じゃあ、僕もずっと君のそばにいるよ」
僕もたしか、あまりきれいではない声でそう返した。
夏も終わり秋にさしかかった頃で、すすきがさらさら揺れていた。
夕日を見ていたその人の表情は、後ろからはわからなかった。
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朝日と鳥の鳴き声で、はっと飛び起きた。
そこにはもう、あの人はいなかった。
僕は棚の上の写真立てを手に取った。
背中を向けて夕日を見つめるその人の表情は、やっぱりわからなかった。
注:見出し画像およびテーマは上記の記事より
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