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自由創作#24 教室の隅のダンス

私は、
サッカー部や野球部と親しくしている女とは気が合わなかった。

何も面白くない。
やや下品な話や
普通のことをやや大きめな声で話す男子の話をやや高く大きな声で笑う。

私の友達と呼べるのは
和田由奈と相内琴葉の2人だった。
2人ともクラスの隅にいるタイプの人間だ。無論、私もそうだ。

大学生になってもサークルには入らず、なんの起伏もない平坦なカレッジライフを過ごした。
学びたい事を学べた。特に後悔はなかった。
そんな生活だったこともあり、友達は教養科目の英語のクラスで一緒だった鈴木優子のただ1人。
高校から大学まででできた友達は、3人。

趣味は、絵を描くことと本を読むこと。
それと古着も好きだ。
自分で小説を書いたりもしている。
絵は小学生の頃、県で表彰された。
古着が好きな事は高校時代の人たちは知らない。想像もしなかっただろう。
幼少期お手玉をおばあちゃんとしていたお陰か、ジャグリングができる。
こんなに面白い特技をほとんどの同級生は知らない。

それから私は社会人になった。

私は、男に奢られている女が苦手だ。
と言うより、ご飯に行った時に奢られなかったらその男を異性としてのポイントが下げてしまう女。もちろん、奢られただけで異性としてのポイントを上げてしまう女もである。

2045年の今、
社会参画においては男女の差別はなくなったと言って過言でない。
むしろ、男女平等を強く謳っていた企業は女性の方が多くなっているくらいだ。
いつしか女性を昇進させたり多く採用することが企業としてのアピールになる風潮さえあった。
まあ、皆の意識の中では平等かは分からない。
それに完全な平等なんてのは計ることのできないものだから仕方がないのだが、少なくとも私はそう感じている。

男性が女性に奢ることは、
社会的に就職しやすかったり、昇進しやすかったりで稼ぎやすい環境だったのなら分かる。
でも平等になってきてもそれはずっと変わる事はなかった。

そんな事しているから女と言うだけでやや下に見られたりするんだ。
奢るのは勝手だ。
人としての善意だとか、それがカッコいいと思うなら奢ればいい。止めはしない。
ただ、男性の女性に奢ると言う行為に対して異性としての評価項目に入れるのは辞めないかと言いたい。
どんな人に言いたいかと言うと、野球部やサッカー部と人気者と仲良くしてる奴らだ。

仕事が定時で終わった。
ある日、唯一の同期の山田(男性社員)が呑みに誘ってきた。
同期はあと3人いたがもう辞めていない。
やや面倒だったが、唯一の同期で愚痴も言える人も他にいないのでたまにはいいかと近くの居酒屋へ向かった。
会社の愚痴やストレスを話した。
山田は面白い話はしない。でもあたかも面白いかのようなテンションで話す。
彼は、元野球部だ。
食事を終えると、
「ここは俺が」と言ってきた。山田のくせに。
いいよと断ったが、払わせてくれと引かなかった。
奢られてしまった。
慣れない経験に、悪い気がしなかった。
家に帰えると自分で自分をぶん殴ってやりたい気持ちになった。
同期に奢られたのも癪だが、悪い気がしていなかった自分が1番キモい。
やだ、これが女なの。

せめて先輩に奢られるなら分かる。同期だぞ。
同じ条件で入社して、地位も変わらず給料も似たようなもんだ。
なぜ奢る。ここで山田を男として優しい人と思ってはいけない。
女性の地位が下がる。

言っておくが、奢られる女への嫉妬ではない。
本気の社会への問題提起として思っていたんだ。決して嫉妬で奢られる女を嫌っていたんじゃない。そう、本当に違うんだ。違う。違う。
山田に奢られた今なんの説得力をないだろうが…

ただ、こんな事を言っていたら可愛くない。
だから人前ではこんな事言えない。自分が損するだけ。
私の心の中だけの話。

まだまだ平等は遠そうだ。


私の個性の居場所は隅の狭く暗いところにしかない。
学生時代からずっと私は
教室の隅でダンスを踊っている。
変わった事は、
教室からオフィスになったことくらいだ。

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