【#春ピリカ応募】指切りの約束
転校してきた美少女は家も近所。友達になりたいのに、地味な私には近寄りがたい存在だった。
その彼女が目の前で冷たく笑いながら、小箱の中身を見せる。
「指切りできる?」
彼女が越してきてから私は時間を合わせて登校している。
でも、どうしても近寄れない。
仲良くなりたいのに、最後の一歩が踏み出せず黙って後ろを歩く日が続いている。そんな奇妙な朝が続くなか、急に彼女が振り向いた。
「私と仲良くなりたい?」
「え……うん!」
あまりの幸運に心臓が飛び出しかかった。
「じゃあ……」
といいながら彼女はポケットから小箱を取り出して、目の前でフタを開けた。中に白く細長いものが入っている。これ……。
「ひぃぃ!こ、小指っ!」
「そう。小指。転校する時に親友が指切りしてくれたの」
自分を忘れて欲しくないからと、目の前で小指を切って渡してくれたのよ、と彼女はウットリした表情で話す。
憧れが恐怖に変った。
「指切りできる?」
冷たく笑いながら彼女が私の手を取る。ポケットに入れた手がゴソゴソと動き、美しい指が何かを探し当てた。細長く光るそれは……
怖い!お母さん!助けて!
「痛っ」
もうだめだと思った瞬間、パァァンと軽い音がした。うっすらと目を開けると頭を抱え、しゃがみ込む彼女と仁王立ちの中年女性。
「もう!あんたって子は」
「いったぁ~い。おば様ひどい!」
「ひどいじゃありません!私はお茶に誘いなさいと言ったのよ!」
「え?」
中年女性は近所に住むスイーツ探偵だった。
探偵と言う割には普通のおばさんなのよね。でもお母さんが無くした指輪を見つけていたし、一応探偵業はしてい……る?
とぼんやり2人を見ていたら、
「大丈夫ですか?」と声をかけられた。
あ、助手C。
腰の抜けた私を優しく起き上がらせてくれた。
「ごめんなさい。驚かせちゃって。姉夫婦が海外転勤の間だけ姪を預かることになって。でも、この子、いたずらが過ぎてね。もうっ」
とスイーツ探偵が私に謝りながら彼女をにらみつける。
「だってぇ。誘おうと思って声をかけようとすると逃げるから、距離を縮めようと思って」
とさっきの小箱を取り出す。
「指!ゆぶっ指ぃ切りぃ!」
「指?」
箱の中身を見たスイーツ探偵が急に笑い出した。
「これ、本物の小指じゃないわよ。シンコモチで作った偽の指よ」
「?」
小指は、「チンコロ」という縁起物の仔犬や十二支を作るために使われる「しんこもち」で作られていた。遊女が愛の証として複数の客に偽の小指を送る際にも使われていたらしい。
それを見せられたのか。
「ごめん!私もあなたと友達になりたかったの」
と謝る彼女は年相応の女の子に見えた。
「ううん。私も悪いから」
その日の放課後、スイーツ探偵宅のお茶会に参加した。頬にチョコレートをつけた彼女がニッコリと笑う。私もパイをほおばりながら笑い返した。
「本日も無事解決ね」
「先生、食べ過ぎです」
「今日くらい許してっ!」
(1177字)
寝坊した😂!
ミステリにしようと思ったのに気づいたら「スイーツ探偵シリーズ」になっていました😂
ピリカさんの企画に参加するたびに「スイーツ探偵」の登場人物が増えていきます。
すごいですよね😊♪
書いている間、本当に楽しかったです♪
素敵な時間をありがとうございました🙌
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