◆諸項の接続秩序には本来的に線条性はなく、言葉のシニフィアンに着目して語・句・文を綴るときにはじめて線条性が現れる。線条性が現れることにより、背景に沈んでいた諸項の接続秩序部分が意識されるようになるので、はじめて範列(パラデイグマ)と統辞(シンタグマ)が理論的に位置付けられる。
◆「二重分節」という比喩的ふくらみをも持つ概念がとても重要であるし有用だと思う。分節が諸項の接続秩序を生むところ、分節自体に自由が内在されているが、二重分節はそこにさらなる自由を加えることにつながる(もちろん、どの段階にも教条化という暗転の契機をもつ。これは避けられない)。
◆諸項の接続秩序(多層多重で複雑な接続関係がある)をきちっと押さえた上で「仮設項」を想像していくことが、アブダクションや背理法(相手の論理を進めて矛盾や不合理な結論に落とす)には欠かせない。これらは訓練することができるように思うし、実生活にもとても役立つと思う。
◆「諸項の接続秩序」は転々流動して止まない無限の様相を有する現実を、ある視点から構成的に解釈して秩序化したものであることに留意。ある項を中心に「後続項」という言い方ができるのであれば、「前続項」という言い方も許されるだろう。既知の項の前続項を発見する逆行推論がアブダクション。
◆個人と集団のあるべき関係というアポリア。「個の創出」は個が集団と切り結び続けている動態を指す。その内実は、個人を取り巻く諸項の接続秩序を見通し見抜き、あるいは項の内包に迫りながら、諸項の接続秩序をつなぎ直し、項を組み換えていくことにある。単なる断絶や敵対、一体化や同化ではなく。
◆諸項の布置状態を見てその接続秩序を変えようとする際に、選択の垂直軸たる《連合、範列、パラディグマ》と結合の水平軸たる《連辞、統語、シンタグマ》があることをまず捉える。前者の組換えはまだ想像しやすいが、後者の組換えは一段の飛躍を要する。逆因果やフィードバック動態などが典型。