【活動報告】公開編集会議 #1「アートプロジェクトの10年本を出版する!」
【活動報告】カテゴリでは、アートプロジェクトラボで主催したイベントのレポートや、本の制作活動に関連する活動をご報告していきます。
「アートプロジェクト10年本」の制作に向けて、各地でどのような取材をするのか? どのような切り⼝で編集をするのか? アートプロジェクトについて知ることのできるメディアはどのような状況なのか? 公開編集会議イベントを7/21に東京・上池袋で開催しました。
アートプロジェクトラボ:公開編集会議#1「アートプロジェクトの10年本を出版する!」
会場は、池袋駅からも徒歩圏の、木造住宅が多く残る地域にあるくすのき荘。元々、運送会社の事務所兼住居として使われていた2階建の木造建築をリノベーションしたスペースで、シェアアトリエやイベントスペースとして、EDIT LOCAL LABORATORYの「木賃ラボ」も運営する「かみいけ木賃文化ネットワーク」が運営しています。
ゲストにお招きしたのは、マガジンハウスで雑誌「アンアン」を20年担当した後、2012年にウェブマガジン「コロカル」を立ち上げた及川卓也さん。
影山、橋本をはじめとするEDIT LOCAL LABORATORYのメンバー、約20人の参加者と共に、現在のアート・カルチャーシーンやそれらを伝えるメディアの状況、芸術祭・アートプロジェクトの価値などについて話し合いました。
都会にはない「楽しい!」「カッコいい!」
まずは及川さんより、コロカルの紹介。コロカルは、旅、工芸、食文化など、幅広いジャンルの地域で起こっていることを発信しているウェブマガジン。アートのコンテンツも大事にしていて、「ローカルアートレポート」というコーナーを持っていたり、橋本が関わっていたアートプロジェクト「KOTOBUKIクリエイティブアクション」に関する特集記事、美術家・内藤礼と旅をして作品の制作、展覧会を行うプロセスを伝えた連載記事などもあります。
50代の及川さん世代は、例えば「都会のかっこよさ」のようなものを雑誌で読んで育ってきた世代。マガジンハウスでも主にそのような価値観を元に仕事をしてきたが、バブルがはじけてからは、都会がどんどん息苦しくなってきて、インディペンデントな面白さが無くなってきたことを実感していたそうです。
そこで注目したのがローカル。都会にはない「「楽しい!」「カッコいい!」がむしろ各地にあるのではないかと仮定し、そこに根ざして活動する人に注目するなどしながら、観光情報ではない、息の長いストック型のコンテンツを意識しているそうです。そして8年続けてきた実感として、それは新しい生き方、働き方、暮らし方など切実な視点に変わってきているとも言います。
また、なぜアート取り上げるのかという点について、
・人を動かす 外から呼ぶチカラ(地域の産業や雇用に貢献)
・人がつながるチカラ(地元の人々の協働 アーティストや外部との協働)
・土地の記憶を呼び戻すチカラ(文化継承とイノベーション)
・地域を保全するチカラ(コミュニティや施設の保全)
・地域に付加価値をつくるチカラ(新しい価値の創造)
という可能性を本来持っている意識があることを共有いただきました。
情報メディアをとりまく状況の変化
続いてしばし、出版社勤務経験もある影山と、雑誌を含む情報メディアをとりまく状況の変化などについてディスカッション。
影山は、30代の自分たちくらいまでが、マガジンハウスが手がけてきたようなアート・カルチャーの都会的なカッコよさが刷り込まれている最後の世代で、特にそれ以下の雑誌を読まなくなった世代との分断を感じている点。アート・カルチャーに対する興味や信頼が薄れている中で、ローカルの文脈でもどのように情報を伝えていくのかという点が問題意識として挙げました。
及川さんからは、雑誌が売れにくくなってきたこと、ウェブの特性からして、コロカルでは編集部の仕事だけでなく、タイアップによる記事はもちろん、様々な地域の独自の媒体制作などを請け負う事業部との仕事のバランスの中で運営をしている実情が共有されました。
それでも、コロカルそのものがきちんとしたビジョンを持っていれば、多様なコンテンツを共存させやすいのがウェブ媒体のいいところだし、その制作を担うチームがいることで、地域をまたぐコンテンツなどの仕事をしやすい、というメリットも語られました。
この辺りは、各地で活動する編集・ライターのコミュニティを持つEDIT LOCAL LABORATORYにとっても興味深い話です。
アートプロジェクトの多様な価値のバリエーションが分かる本
最後に影山と橋本から、EDIT LOCAL LABORATORYやクラウドファンディングに関する話もさせていただきました。
影山としては、そもそも新聞・雑誌の定期購読やオンラインサロンのような、サブスクリプション型で、情報の流れが一方向になりやすいメディアではなくて、コミュニティのあるところから必要な情報を集める、言わば読み手と作り手が入り混じるようなコミュニティベースドメディアのようなあり方がこれから必要とされていくだろうという考えを持っています。
そして今回つくる本は、EDIT LOCAL LABORATORYの「アートプロジェクトラボ」を中心としながらも、クラウドファンディングを通してコミュニティのレイヤーを広げて制作をしたいと考えている点を橋本からもお話しさせていただきました。
そして、2人が注目している事例もいくつか紹介させていただきました。
・「あいちトリエンナーレ」が開催されてきた名古屋市長者町地区の経年の動きと、名古屋港地区(アッセンブリッジ・ナゴヤ)への展開
・ビジュアルインパクトで多様な人の興味をひいた「おじさんの顔が浮かぶ日」などを手がけてきた現代アートチーム 目 [mé]のプロジェクト
・地域資源を生かした芸術祭や、まちづくりに寄与するアート活動だけでなく、中小企業の課題解決などソーシャルインパクトのある事業にも取り組むBEPPU PROJECTの活動
・障害の有無を超えて生きづらさを抱える人の居場所や表現の場づくりに取り組む「ココルーム」や「クリエイティブサポートレッツ」の活動。
及川さんからは、「アーティストの想いや作品というものを超えて見えてきた、地域への新しい視点など、経済効果や動員などの数字だけでは測れない、アートプロジェクトの多様な価値のバリエーションが分かる本になることを期待します。」と期待の声をいただきました。
なお、今回は公開編集会議というイベントのかたちにさせていただきましたが、「編集に参加する!」リターンでクラウドファンディングにご参加いただきました皆さまには、オンラインでの編集会議や勉強会へ随時ご参加いただけます。ぜひご検討ください!
EDIT LOCAL LABORATORY 橋本誠
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◯日本各地で行われているアートプロジェクトの10年の動きを伝える本を出版したい! https://motion-gallery.net/projects/editlocal_artbook/
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