においと、おうちの記憶
ぼくはいま、人の住んでいないお家を
次の住み手さんにつなげるおしごとをしている。
空き家に行くと、そこに前すんでいたひとのにおいがする。
…
ボクはちいさいころ、
友達の家にいくのがスキだった。
友達がすくなかったからなかなかない機会に
わくわくしたからかもしれないけど、
友達の家は、ゲームと一緒でぼくにとっての非日常であり、特別な場所だったのだ。
敷居をまたぐと、ふんわり
自分とちがう『におい』がする。
他の人のにおいのするおうちが
ボクはキライではない。
お料理屋のおだしのにおいがするおうち
ふんわりみりんの香りがするおうち
古いあぶらのにおいがこびりついたおうち
ねこのおひさまのにおいがするおうち
いぬのふかふかするにおいがするおうち
お線香のにおいのするおうち
(↑おばあちゃんちと、いっしょ!)
ベルガモットのアロマがしみついた
美味しそうなおうち
ウルトラマリンのさわやかな香りがのこるお部屋
せっけんのにおいがするほっこりするおうち
壁をぬりなおした、塗料のにおいがするおうち
すんっと鼻ちいさくなるような
気がする木のにおいがするおうち
山と一体化しているのか?っていうくらい
土のにおいがする土間
雨が降ると、緑のにおいがたちこめるお家…
書き起こせばきりがないんだけど、無臭の家なんてない。
不思議とその家のにおいがあるのだ。
その家の匂いをかぐと、その人の生活が
色々想像できておもしろい(←妄想ともいう!)
たまに、昔よく遊んだ友達の家と
同じにおいがする家がある。
「ああ、あのときと同じにおい!」と、
昔を思い出してとっても懐かしい気分になる。
においは、きっとその家の歴史であり、
思い出なんだろう。
古いおうちであればあるほど、
においは香ばしい。
(↑そういう意味では、京町家はとくにボクのだいこうぶつだ!)
ボクの誰か知らない人が、ボクと同じように
ここで生活を営んでいたのだとおもうと不思議な気持ちになる。
…
同僚「にゃむさーん、物件の撮影おわりました?」
おっといけない。
ボクは我に返って、慌ててシャッターをきるのであった。
…
ぼくはいま、人の住んでいないお家を
次の住み手さんにつなげるおしごとをしている。
空き家に行くと、そこに前すんでいたひとのにおいがする。
この家に、また新たな『におい』がするとよい。
あとがき
ボクのおしごとは、写真やwebで
お家の良さを伝えることなので、
においを伝えることができなくてざんねんだ。
写真に『におい』が残ったら良いのに。
もちろん、においに好みはあるんだけど、
記憶としてのにおいはどんなものでもなんだか愛おしい。
『いいにおい…。他人のにおいのするエヴァも悪くない』
といったあの人の気持ちが、ボクには結構しっくりくる😼
(※においを推奨しているわけではないのです、
感じ方はひとそれぞれだしボクにだってキライな臭いはあります。スメルハラスメントは良くにゃいのです😿)