見出し画像

U理論とは? -共創造の思考法を発達支援に活かす-


U理論とは

近年、組織開発やリーダーシップの分野で注目されている「U理論」をご存じでしょうか?

U理論は、MIT(マサチューセッツ工科大学)のオットー・シャーマー博士が提唱した理論で、個人や組織が深い変容を遂げるためのプロセスを示しています。著書『U理論:出現する未来からのリーダーシップ』が出版されたのは2007年ですので、もう20年近くが経ちますが、私がその存在を知ったのは2024年の年末でした。

今回は、U理論の基本概念と、放課後等デイサービスなどの発達支援にどのように活用できるかを考えてみたいと思います。

U理論の基本概念

U理論は、変革のプロセスを「U字型」の流れで説明します。主に以下の3つのステップに分かれます。

  1. ダウンローディング(Downloading)
    過去の経験や固定観念に基づいて物事を判断する段階です。この段階では、新しい視点を得ることが難しく、従来のやり方に固執しがちです。

  2. プレゼンシング(Presencing)
    「Presence(現在)」と「Sensing(感知する)」を組み合わせた言葉で、過去の枠を超えて、本当に必要な未来の可能性を感じ取る段階です。深い自己探求や共感を通じて、真に意味のある行動のヒントを得ます。

  3. クリエイティング(Creating)
    未来の可能性を現実のものとする段階です。新しい視点をもとに行動を起こし、組織や社会に変化を生み出していきます。

現象学と類似?

U理論では、ダウンローディングという最初のステップで、過去に囚われている考えや決めつけなどをいったん「保留」するところから始まります。この考えに触れた時、私は現象学の「かっこに入れる」、「わきに置いておく」という考えと共通する部分があると感じました。

しかし、私が考えるこの類似点はあまり論じられていませんので、やはり現象学は哲学、U理論は心理学というカバーする領域の違いがあるのでしょう。

これらの考えを発達支援に組み込むと、その児童の対人関係の難しさや学校生活など社会との関係はいったん保留し、わきに置いておいて、「その児童のありのままを見つめてニーズを探る」となります。

発達支援におけるU理論の活用

放課後等デイサービスなど発達支援において、U理論のアプローチは大いに役立つと感じます。

  • 子どもたちの本当のニーズを感じ取る(プレゼンシング)
    社会との関係や従来の支援方法にとらわれるのではなく、子どもたち一人ひとりの可能性を探り、より適切なサポートを模索します。

  • 職員間のコミュニケーションの質を向上させる
    既存のルールや価値観に縛られるのではなく、対話を深めることで新しい気づきや関係性を得ることができます。

  • 地域や保護者と共に未来を創る(クリエイティング)
    サービスの枠を超えて、地域や他の社会資源、そして保護者と共に子どもたちの発達を支援する仕組みを構築していきます。

最後に

U理論は、単なる理論ではなく、実際の行動変容につなげることができる強力なツールです。固定観念による「決めつけ」や「判断」を手放し、新しいアイデアや関係性を共に創る考え方です。アスリートがFLOW状態になるように、U理論はそのプロセスを通じて意識的にFLOW状態をつくりだすスキルとも言えます。

放課後等デイサービスなど発達支援においても、子どもたちのありのままを見つめ、可能性を最大限に引き出し、より良い支援を提供するために、U理論のアプローチを活用したいものです。

いいなと思ったら応援しよう!