この祖母なかりせば。(久保田万太郎、あるいは悪漢の涙 第二十一回)
万太郎はその作品のなかで、父、母、兄に対しては、肉親の情をいぶかしく思えるほど示していない。
追悼句さえも残さなかった。
例外は、祖母と早世した妹、最初の夫人の死後、身の回りのやっかいをかけた妹小夜子の三人である。
好學社版全集、第二巻の後記に、
「わたくしは祖母千代をうしなつた。大正六年の十月だった。・・・・・その祖母がわたくしにとつてどんな人だつたかといふことは・・・・いゝえ、どんな人だったかといふことを書こうとしたのがこの巻に収めた”妹におくる”である。この祖母なかりせば、わたくしに、わたくしの今日は決して與へられなたつたらうといま以て信じてゐるわたくしである。」
と手放しの感謝を贈っている。
年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。