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巨象のような体躯を持った歌舞伎は、どこへ行くのか。

 演劇は舞台と観客が同じ空間と時間をともにするのが基本だと思ってきました。
 その考えは、今も変わっていませんが、NTライブのすぐれた作品は、演劇ではないけれども作品としての価値が高いので、ときおり映画館へ足を運びます。千穐楽に行ったりすると、演劇関係者が半数などという日もあって、みんなよい舞台を観たいのだなとかねがね思っていました。

 コロナウィルスの脅威が始まってからは、急に歌舞伎界がこの配信に参入してきました。
 もっとも積極的なのは松本幸四郎で、進取の精神にとんだ家だけに、実現していくのも早かった。
 私は古いせいか、獅童と初音ミクの公演も見逃しているくらいなので、「凄いな、積極的だな」と思うばかりで、実際、配信を見ることがありませんでした。

 ところが、中村吉右衛門が、ひとり芝居を配信すると聞いて、ここまで来たのかと驚きました。松貫四の名前で、吉右衛門はこれまでも新作を書いてきましたが、今回は「一谷嫩軍記」を意識した一人芝居になるとのことです。

 吉右衛門は、時代物を中心とした歌舞伎の大立者で、まさか、配信にのりだすとは思ってもみませんでした。もちろん「ひとり芝居」ですから、吉右衛門と一座することの多い又五郎や歌六、雀右衛門、菊之助の出番はなさそうです。

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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。