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【劇評367】夜の闇が劇場に流れ込むヌトミックの『何時までも果てしなく続く冒険』の斬新。

 ソリッドな音楽劇を観た。

 ヌトミックの『何時までも果てしなく続く冒険』(額田大志作・演出・音楽)は、十一年前に新宿の夜の街で亡くなったノラ(原田つむぎ)をめぐって、さまざまな人物が自分の心象風景を重ねあわせていく。第一発見者になった元ホストのムサシ(矢野昌幸)と客のまどか(佐山和泉)が、街をクルーズしていく情景から劇は立ち上がる。
 やがて、ノラの姉、真阿子(薬師寺典子)やノラの幼馴染みジャスティス(長沼航)の回想が交錯し、謎の女ユッキー(emohoi)の存在が浮かびあがってくる。
 この六人のパフォーマーと三人のミュージシャン細井徳太郎(Gt.)、渡健人(Ds.)額田大志(Syn.)が絡み合いながら舞台は進む。台詞劇に伴奏がつくのではない。パフォーマーは台詞をラップで語り、感情を表にださないモーションを組み合わせる。加えて、ミュージシャンたちが緻密に構成された音楽で応えていく。その意味では、パフォーマーとミュージシャンの区別は曖昧であり、九人のパフォーマーと呼ぶ方がふさわしい。
 『何時までも果てしなく続く冒険』は、ノラが亡くなった理由を解き明かすのが目的ではない。その死によって流れ出した周囲の人びとの意識が、時空を超えた場を飛び交っていた。

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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。