エピグラフがあまり長いのは、野暮だと承知している。
文章の冒頭にエピグラフの置くのは、憧れだった。
いつかはそんな文章を書いてみたいと思い続けていたが、なんだか偉そうにも思え、若い頃はとても手が出なかった。老年にさしかかっても、気恥ずかしさもあって、これまで実現できずにいた。
早川書房発行の演劇雑誌『悲劇喜劇』に連載を持つにあたって、このささやかな夢を実現してみることにした。
連載を始めるにあたっては、編集者との共同作業が多い。連載タイトルやページのデザインはもちろん、内容についての相談が欠かせない。
単純に劇評のページを持つのであれば、それほどの決めごとはないが、四百字詰め原稿用紙十五枚の連載となれば、周到な準備が必要になる。
この『シーン・チェンジズ』をはじめたのは、二○一七年の九月号からなので、この年の夏は、準備のために担当の早川涼子さんと頻繁に連絡を取った。
連載の第一回はどうしても気が張る。その緊張をゆるめるために、自分に制約を課した。
まず、タイトルは読者への問いかけとしたいと思った。なので、疑問形にしようと思った。
まず、第一回のタイトルは、
ハムレットと知盛は、砕けきった時代の鏡となりうるか?
とした。
タイトルには、含まれた意味がある。批評の対象を現代演劇と歌舞伎の両方としてきたので、ハムレットと平知盛の名を両方いれた。
また、すぐれた演劇は時代の鏡となりうるという見方も示したかった。
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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。