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【劇評312】歌六、勘九郎、児太郎の『金閣寺』。力作が揃う吉右衛門三回忌追善。

 祖父と孫の共演は、なぜ、ここまで観客の胸を打つのだろうか。

 秀山祭九月大歌舞伎は、二世中村吉右衛門三回忌追善である。ロビーに飾られた写真と花を見るにつけても、吉右衛門の芸容の大きさ、独特の色気が急に思い出された。

 吉右衛門の実兄、白鸚は、この追善興行に『二條城の清正』を、孫の染五郎とともに出した。依田川御座船の場である。巨大な船に、染五郎の豊臣秀頼と白鸚の加藤清正が向かい合う純然たる台詞劇である。

 いうまでもなく、秀頼と清正は、主従である。師にあたる祖父が、孫に礼儀を尽くして、仕える。この関係性の逆転がまずおもしろくい。

白鸚は衰えを見せぬ声で、幼い頃、「爺」と慕ってくれた過去を物語るときに、実生活の祖父と孫の姿がだぶってくる。観客を前に、舞台上で、歌舞伎の骨法を教えている。そのかけがえのない場に立ち会っている心地だった。

 昼の部は、時代物の大作『金閣寺』と、舞踊劇の大曲『土蜘』が出た。身を引き締めて、出演する役者が全力でかからなければならぬ狂言である。

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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。