『菊五郎の色気』を書いたあの頃。
歌舞伎について、本格的に取り組むようになったのは、文春新書のために 『菊五郎の色気』を書いてからです。調べ物も多く、困難な書き下ろしだったけれど、今となっては懐かしい。
出版したのは、2007年の6月だから、もう13年が過ぎてしまった。
このころは、折に触れて、菊五郎さんとお目にかかる機会があった。
思い出に残っているのは、四度ある。
はじめに、この企画を進めるに当たって、新書の局長と、担当編集者と歌舞伎座の楽屋を訪ねた。菊之助さんに繋いでいただき、同席してもらった。
内容を説明すると菊五郎さんは「売れませんよ」と照れた笑いを浮かべた。東京人のというか江戸の人の含羞を感じた。実は、うれしく思っていらっしゃるのではないかと思って、書き始めると決めてよかったと安堵した。
それから一年半くらいかかったのだろうか。著者分の配本があったので、博多座に出演されていた菊五郎さんを訪ねた。
楽屋では、おおできたんだねと、クールだったが、終演後に会いましょうと誘って下さった。
年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。