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長谷部浩のノート お芝居と劇評とその周辺

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2023年3月の記事一覧

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ペリカンのスーべレーンと樋口可南子さんの思い出。

 手紙や葉書を書くときは、できるかぎり万年筆を使うようにしています。  ウォーターマン(フィリップ・スタルクデザインのもの)やモンブラン(太軸 マイスターシュテュック)も控えに用意しているけれども、今、頻繁に使っているのは、ペリカンのスーべレーン(緑軸 M600)です。外出に連れて行っては、紛失を繰り返しているので、今、手元にあるのは恐らく四代目です。  気分をかえるために、ペリカン社のエーデルシュタインのインクを求めて、万年筆とともに写真を撮ったら急に思い出が蘇ってきま

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【劇評297】美と醜、対話と独白。人間の根源に迫る玉三郎の『髑髏尼』

 なぜここまで暗い芝居をあえて舞台にのせるのか。  吉井勇作、坂東玉三郎演出、今井豊茂補綴の『髑髏尼』を観て、正直いっていぶかしく思った。  吉井勇の作は、大正六年。風変わりな歌舞伎が好まれた時代の初演である。筋書によると、玉三郎は昭和三十七年に、六代目歌右衛門の髑髏尼、十七代目勘三郎の七兵衛と平重衡で上演された舞台が目に残っていると語っている。今回の舞台は、幼い頃に観たこの特異な上演を、玉三郎独自の美意識によって再構成したのだろう。  第一場の都万里小路は、平家が都を

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【劇評296】宮沢りえ、小日向文世の『アンナ・カレーリナ』。過剰な演出が、かえって空虚な舞台を生み出している。

 古典の大胆な新解釈によって、埃を被っていた戯曲が、現在を撃つ舞台に生まれかわるのを観るのは楽しい。  ただし、それがロシアの大河小説を原作とした場合は、内実をともなった舞台にしあげるのは、きわめてむずかしい。  フィリップ・ブリーン上演台本・演出の『アンナ・カレーリナ』(レフ・トルストイ原作 木内宏昌翻訳)は、過剰なまでの演出が、かえって登場人物たちの空疎な内面をあぶりだした。  もとより、それが演出の狙いなのだと言われればそれまでである。  けれども、圧倒的な美貌と舞

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