【劇評335】ミージカルの最前線。三浦透子の深く、悲しい演技と歌唱。人間の心の闇を描いて、見逃せない『VIOLET』。
傷痕は、誰のこころにも刻まれている。
藤田俊太郎演出の『VIOLET』(ジニーン。テソーリ音楽 ブライアン・クロウリー脚本・歌詞 ドリス・ベイツ原作 芝田未希翻訳・訳詞)は、二○一九年、ロンドンのオフ・ウェストエンドで初演された。二二年二は日本でも初演されたけれど、コロナ禍のために、ごく短期間の公演にとどまった。
今回、満を持して再演されるにあたって、主役のヴァイオレットは、三浦透子と屋比久知奈のふたりで、ダブルキャストを組んだ。
この作品は、一九六十年代、人種差