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劇評家の仕事

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二五歳の頃から、ずいぶん長い間、途切れることなく劇評を書いてきました。なぜ、こんな仕事を選んだのか、日々どんなことを考えて劇場に行くのか、原稿を書くにあたってどんな資料にあたった…
不定期ではありますが、四季折々に考えたこと、書くことの楽しみ、そして苦しみについても書いていきます…
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記事一覧

【劇評家の仕事7】入稿原稿を渡した翌日に、改めて思うこと。いくつか。

 昨日の夕方、編集者に入稿原稿を送った。目次、索引、初出一覧、あとがきは先週のうちに完成…

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長谷部浩
11日前
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あけましておめでとうございます。

 陽光にめぐまれた松の内です。みなさまご健勝のこととお慶び申しあげます。  今年はていね…

長谷部浩
1か月前
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夏の仕事

  慶應義塾大学では、永井荷風や久保田万太郎らが健筆をふるった「三田文學」を刊行していま…

長谷部浩
7か月前
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【劇評家の仕事7】文体模倣までしました。渡辺保と扇田昭彦が私に与えた影響

 劇評を書き始めた頃、十代後半から二十代は、先行する劇評家の文章をよく読んでいました。 …

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長谷部浩
8か月前
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【劇評家の仕事6】視力を失う恐怖感は、いつも頭を去らない。

 批評家にとって、何が一番大切なのか。  月並みですが、劇場に行って、資料を読み、劇評を…

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長谷部浩
8か月前
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【劇評家の仕事5】遊興の徒となるべく、学生時代を過ごしました

 なぜ、文藝でもなく、映画でもなく、演劇評論家になったのでしょうか。  ひとことで答える…

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長谷部浩
8か月前
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【劇評家の仕事4】中谷美紀の『オフ・ブロードウェイ奮闘記 』を読んで。

 書くのをやめないこと  演劇評論家と名乗り続けてきました。そのためには、批評を書き続けることが必要で、書くのをやめたとたんに、この職業名は捨てなければいけないと思って来ました。  女優の李礼仙は、別冊新評の『唐十郎の世界』(昭和四十五年)に収録されたインタビューのなかで、好きな言葉は?と問われ「女優でいたければ、芝居をやめないこと」と答えています。この言葉がなぜか私に取り憑いていて、評論家も同じことだと思い定めてきました。  また、「女優として気をつけるところは?」とい

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【劇評家の仕事3】劇評は、客観的な審判ではなく、きわめて個人的な営みです。

 劇評は、舞台の分析、位置づけのためにあります。  舞台がおもしろかったか、観るに値する…

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長谷部浩
8か月前
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紀伊國屋演劇賞。審査はあくまでサロン的に。

 紀伊國屋演劇賞の選考に関わるようになったのは、1999年のことだから、すでに20年余りが過ぎ…

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長谷部浩
3年前
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雑誌「演劇界」が休刊となる。その残酷に身がすくむ。

 雑誌「演劇界」の休刊が決まった。  頻繁に寄稿していた時期があるので、突然の報を聞いて…

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長谷部浩
3年前
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演出家薛珠麗さんが、逝った。

 演出家、翻訳家、通訳の薛珠麗さんが、亡くなった。私がTPTに頻繁に出入りしていたのは、一…

長谷部浩
1年前
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演出家と翻訳家と批評家が、神保町で中華を食べる。

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長谷部浩
1年前
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紀伊國屋ホールの舞台を踏んだ思い出。

 年に一度だけ、舞台裏に入ります。暗幕の向こう側が、受賞者と審査員の控え室になっていて、…

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長谷部浩
1年前
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ロンドン観劇雑感、その1。マイクを使った演出に、あなたは抵抗がありますか?

 ロンドンでは四本の芝居を観た。そのうち二本『キャバレー』と『オープニング・ナイト』はミュージカルなので、マイクをつかうのは特別なことではない。けれど、ヤエル・ファーバー演出の『リア王』、トーマス・オスターマイヤー演出の『民衆の敵』の両方で、マイクを使っていたのには驚いた。  もちろん、俳優の声量をおぎなうためではない。『リア王』では、三人の娘がリアへの愛情をアピールする場面で、演説会のように、スタンドマイクが林立していた。『民衆の敵』では、冒頭の場面、ホームパーティで登場

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